3DプリンターEnder-3を使った評価テストやアップグレード、独自改造、製作品の紹介などの記事を載せています。
今回のテーマは、Z軸バックラッシュ量及びX軸のたわみ量に関する考察です。
疑問に感じたこと
これまでの改造記事で、「デュアルZ軸化(2軸をベルトで連結同期する方式)」や「アンチバックラッシュスプリングの取り付け」といったZ軸に関わる改造を紹介してきました。
これらの目的は、オートレベリングの補正動作を確実に行うために有効であろうと考えていたものでした。ネット上でもこれらに関わる改造記事や商品がたくさん出回っています。
しかしながら、はたしてどれだけの効果や数値データ化されたものがあるのか、見つけることができませんでした。
実際、私のプリンター(Ender-3)ではその効果を実感することはありませんでした。
「まあ、安定して印刷できているからこのままでいいか」ってことで続けていました。
しかし、いつの頃からか印刷物の積層方向に送りねじピッチムラ(8mmピッチ)が目立ってきて、「デュアルZ軸化」改造を取り外しました。その後、このムラは消えています。
再調整するにしても、試行錯誤の繰り返しテストも予想され断念しました。
そこで思ったのですが、これらの改造って本当にどれだけ改善されるのか、数値化できないものかと・・。最終印刷物の仕上がりで評価すればいいのですが、条件設定、印刷時間など判断に迷います。
簡単に数値化評価する方法はないものか?
我が家には、精密なダイヤルゲージやピックテスターといったものはありません。
もちろん購入するほどの余裕もありません。
では、どうやって数値化するか・・、Ender-3の操作パネルをいじりながら考えていました。
こんな簡単な方法がある!
ついにいい方法を見つけました。
Ender-3のZ軸の手動操作では、0.025mm単位で上下移動させる機能があります。
これを使ってバックラッシュがどれだけあるのか判断できます。
ここで行う方法では、静的な位置変化であって、振動や追従性など動的変動は評価できません。でも、まずは基本となる位置変化だけでも知ることができれば、評価の価値があると思います。
ここでは、X軸フレームの右側高さ変化を測ることにします。
装置の状態
3DプリンターEnder-3の基本型同等(Z軸駆動は1本の送りねじ)
【2002/11/06追記】送りねじ上端に振れ止めのブロックを取り付けた状態で測定していましたので、一部追記修正しています。
準備するもの
X軸フレームの高さを測るための治具。これだけです。
印刷して作るほうが手っ取り早いので、次のようなものを作りました。
理屈は、ベースフレームとX軸フレームの間に入れる隙間ゲージとなります。
測定手順(Z軸バックラッシュ)
1.装置(Ender-3)の電源を入れます。
2.Z軸の送りねじを手回しして、ベースフレームとX軸フレームの間に治具を入れます。
私のEnder-3は操作パネルを別置きにしてるので作業は容易ですが、オリジナル形では少し作業し難いかも・・。
3.操作パネルの手動操作で、Z軸を動かす準備をします。
「Move 0.025mm」を選択すると、「Move Z: 0.000」の表示となります。
4.一旦治具を外して、Z軸を-0.5mm以下にします。(バックラッシュ取りのため)
5.Z軸を徐々に上げて、治具が隙間に丁度入る当たりで止めます。
今回は、-0.050mmの位置で丁度いい隙間となりました。
この時の隙間に入る時の感触を覚えておきます。
6.次にZ軸を1単位(0.025mm)下げたり、下げたり、また戻したりしながら、隙間の感触の違いを感じ取ります。何度か試しながら再現性を調べます。
測定結果(Z軸バックラッシュ)
1.アンチバックラッシュスプリングのない状態:
1単位(0.025mm)毎の上下で、明確に隙間の違いを感じたので、バックラッシュ量は0.025mm以下と判断できます。
【2002/11/06追記】送りねじ上端に振れ止めのブロック有無に関わらず同等でした。
2.アンチバックラッシュスプリングを取り付けた状態:
同様に、1単位(0.025mm)毎の上下で隙間の違いがあり、バックラッシュ量は0.025mm以下と判断できます。
X軸フレームのたわみ測定
X軸フレーム上をヘッド部が左右に動くことによる、フレームのたわみが懸念されます。
X軸フレームのユニットは、左側片点支持となっており、ヘッド部が右端に移動した時、どれぐらいたわむのかを同じ治具を使って確認することもできます。
測定手順(X軸たわみ)
Z軸バックラッシュと同じ治具を使用して、ヘッド部を左端から右端に移動したときのX軸フレームの高さの変化を調べます。
この操作は、上記のバックラッシュを調べる途中で実施しました。
1.操作パネルの手動操作でX軸を左右に動かします。
「Move X: 0.0」の表示での治具の入り具合を覚えておきます。
2.「Move X: 180.0」程度にヘッドを移動させて、治具の入り具合を調べます。
3.「Move X: 0.0」のときの感触と異なれば、Z軸の手動操作に戻ります。
4.Z軸を、1単位(0.025mm)ずつ動かし、「Move X: 0.0」のときの感触と同等となる位置を探します。
説明がややこしいのですが、理屈を理解して何度か繰り返すと分かって頂けると思います。
測定結果(X軸たわみ)
X軸たわみ量が、0.025~0.050mmと判断しました。
【2022/11/06追記】送りねじ上端に振れ止めのブロック取付状態での値です。
送りねじ上端フリーの場合、0.075~0.100mmとなりました。
私のヘッドはダイレクトエクストルーダ化していますので、多少重くなっています。
ボーデン式のエクストルーダならば、もっと少ないと思います。
まとめ【2022/11/06追記修正】
私の現在の装置の状態では、
・Z軸バックラッシュ量は、0.025mm以下(送りねじ振れ止め有無に関わらず)
・X軸たわみは、0.025~0.050mm(送りねじ振れ止め有り)
0.075~0.100mm(送りねじ振れ止め無し)
となりました。
この程度の量ならば、バックラッシュについてはほとんど気にならない値ではないでしょうか?
考察
私の装置(Ender-3)については、ほぼ適正に調整できていると思いますが、大きな値となるようであれば、いくつかの点検調整で改善できると思います。
特にX軸アセンブリを支える左右のローラ(プーリーアセンブリ)の取り付け具合や、各部のねじのゆるみ点検等が重要と思います。
ローラーの調整は左側(Z軸駆動側)は、ある程度しっかりと右側はやや緩めにという感覚で調整しています。
改善具合も、上記の方法で簡単に評価できます。
これならば、中途半端に「デュアルZ軸化(ベルト同期式)」したり、「アンチバックラッシュスプリング取り付け」といったことも必要ないのではないかと感じています。
但し、動的な変動(振動や追従性など)要素を加味していませんので、システムに合った対策をすればいいと思います。私のEnder-3は、それほど高速で動かすこともないので、今回の改造は不要かなと思いました。(あくまでも個人的な感想です)
改造を取り外してからの印刷量もまだ少ないので、時間を掛けて評価していきます。
【2002/11/06追記】
今回のテストでは、「アンチバックラッシュスプリング取り付け」が必要ないのでは、と評価してしまいましたが、送りねじ振れ止め有無でX軸たわみ量に違いがありました。ここで気が付いたのですが、私のヘッド部はダイレクトエクストルーダ化していますので、フィラメントを引き込む力がヘッド部の重さにも直接変化を与えます。X軸たわみ量も不安定になる可能性があります。
このような懸念を払拭するためにも「デュアルZ軸化」や「アンチバックラッシュスプリング取り付け」は、やはり有効なのかなぁ、と考えを改めています。
ただ、しばらくは改造なしで、送りねじ振れ止め付きで進めていきます。