GGの挑戦

3Dプリンターライフを楽しんでいます

パラアスリートを応援します(動くリアル模型に挑戦)

 当ブログは、FDM方式3Dプリンター(Ender-3,Neptune4)に関わる記事や、作品の紹介などを気まぐれに投稿しています。

 最近の作品では、メカ機構を使ったオリジナルおもちゃ作りを続けていました。

孫たちも喜んでくれており、次なる作品にも(一体何を作るのか)期待を寄せてくれていると思っています。

 そんな昨今ですが、私としてはどうしても形にしたかったことがあり、ようやく仕上がりましたので紹介したいと思います。

製作の動機

 私の地元神戸のユニバー記念競技場で、この5月に「世界パラ陸上競技大会」が開催されます。世界のトップアスリートたちがこの神戸に集い、超人的な能力やひたむきな姿で私たちに大きな感動を与えてくれることでしょう。
 2度の開催延期からようやく開催されることが決まり、アスリートたちの意気込みも一段と高まっていると思います。

kobe2022wpac.org

 そんなアスリートたちへの応援の気持ちを込めて、私として出来る方法はないかと思案し、パラアスリートの姿を表現することを思いついたのです。

作品のイメージ作り

 パラ陸上といっても多種多様な種目がありますが、私が着目したのがトラック上を颯爽(さっそう)と走るレーサー(競技用車いすの姿です。
 当初はトラック全体を複数のレーサーが疾走する様を描こうかと構想してみましたが、トラックが大き過ぎてゲームセンターにある競馬ゲームのようになってしまいそうで、これは断念しました。
 結局は、選手一人にクローズアップして、その動きを出来るだけリアルに表現することにしました。

最終仕上がり状態

 まず最終的に出来上がった状態を紹介します。

仕上がり状態

動画もあります。

youtu.be

 相変わらずのぎこちない動画紹介ですが、アスリートの雰囲気が伝われば幸いです。想像で作っている部分も多々ありますので、違和感などありましたらご容赦ください。

以下、製作に至る経緯、構造など説明していきます。

再現する動作の絞り込み

 レーサーって腕の力だけで大きな車輪を回してスピードを競うので、極限までに無駄を省いた美しいフォルムの車体と鍛え上げられた肉体、腕の動きの一体感は観る方にとっては本当に美しい光景です。
 そんな選手の動きを細かく再現して小さな模型にすることは到底無理なので、特徴的な動きだけに絞って再現することにしました。
 幸い(と言っては失礼なのですが・・)レーサの動きは単調な連続動作なので、次の動きに絞りました。

①大きな車輪の動き:単純な回転動作なのですが、「ハ」の字になっっているので工夫が必要です。
②前輪の動き:後輪との外径比率で回転数を決めます。
③腕の動き:後輪の持ち手(?)を常に回し続ける動きなのですが、高速の時など後ろに腕を跳ね上げる動作もあります。 しかし、この跳ね上げ動作の再現を含むことは難しく、今回は常に持ち手を持った状態としました。
④上半身の動き:腕の位置に合わせて上下に動く動作とします。
⑤頭の動き:上半身の動きに合わせてわずかに上下するようにします。
⑥全体動作の加減速:遅い走りから速い走りまで再現できるようにします。

試行錯誤の連続

 全体の動作としては単純な連続動作なのですが、いざ作ってみると様々な課題がありました。
 最終仕上がり品の大きさとしては、20㎝四方以内3Dプリンターのプレートサイズ以内)と決めていましたので、表に見えない機構部分をスマートな外見にどうやって収めるかでした。
 実際の動作のように腕の力で車輪を回すのは至難な業なので、車輪を回して腕が付いてくるようにしました。
 この場合でも駆動の車輪が「ハ」の字なので軸変換が必要だったり、腕の動きの自由度が思った以上に大きくかつ自然に見えないといけないし、何度も何度も試作してようやく最終形状にたどり着きました。
 車軸にはユニバーサルジョイント機構を入れ、腕の関節はボールジョイントで繋ぎました。
胴体や頭の動きは、カムや胴体内にリンク機構を組み込みFusion360内で、動作シミュレーションを繰り返しました。

 駆動部は台座部分に仕込み、車軸への伝達や前輪の回転を行うようにしました。駆動源は、3Vの小さな減速機付きモータで回転速度を変えられるようにDCコントローラを付けました。いずれも格安品でコンパクトに収まるので、非常に便利なのですが、この手のモーターって非常に音が大きいのです。ケースなどと共振すると爆音になります。
この音対策も大きな課題でした。台座内でも多くのギヤを使うので更に助長され如何に静音化するかでした。
 そして、静音化の決め手は、TPUフィラメントでした。モーターブラケットをTPUとして、振動を土台に伝えない構造にすることで大きな効果があります。また、ギヤも堅いPLAやABS同士で組み合わせると騒音が発生しますが、片方の歯部分だけをTPUとすることで、騒音が激減します。

そんなこんなを試作しながらようやく形になったのが、最終形なのです。

内部構造

 まず腕ですが、手のひら部をボールジョイントで車輪に取り付けています。肘関節も大きく曲がるようにし、肩関節もボールジョイントで自由度を大きくとっています。

腕を取り外した状態

 車輪の回転は、「ハ」の字になっているので、ユニバーサルジョイント方式で軸回転を傾けて車輪に伝えています。次の写真(車体裏の状態)を見て頂ければわかると思いますが、中央が駆動用のギヤで左右それぞれに設けています。

車体内部のユニバーサルジョイント

  胴体は内部ベースに固定しているだけで、内部ベースに首振り用のリンク機構を入れています。

胴体内部の首振り用リンク機構

 台座部の構造は全てギヤで組み合わせています。ベルト連結という手もありますが、3Dプリンター加工の場合、ギヤの方が作り易く組み込み易いためです。黒色のパーツがTPU素材です。

台座裏面

 製作品は電気パーツ以外3Dプリンター加工品と真鍮釘、ビス類のみで作っています。

 

まとめ

 今回の製作品は、パラアスリートに敬意を表したく作ったのですが、不自然な動きなどありましたらご容赦ください。
 今回も動くパーツの難しさを実感した取り組みでしたが、このような積み重ねで更に新たな動きへの挑戦もありますので、今後も新たなテーマを見つけて形つくりをしていきます。

 3Dプリンターで遊ぶ楽しさを少しでも感じて頂ければ幸いです。