最近は3DプリンターNeptune4に関わる記事や、作品の紹介など気まぐれに投稿しています。
前回の記事では「最大体積流量」について簡易測定方法など紹介させて頂きました。
これまでも、印刷時間短縮に関わる内容をいくつか紹介していましたが、今回はこれらの集大成として(ちょっと大げさですが・・)3D Benchyの船がどこまで時間短縮して印刷できるのか、挑戦してみました。
最近の超高速FDM3Dプリンターとして、Creality K1がこの3D Benchyを13分で印刷できるとして話題になっています。
実際の仕上がりがどの程度かはわかりませんが、そこそこ綺麗な仕上がりと思います。
そこで、今回のテストは、手持ちのELEGOO Neptune4で同じような時間で印刷したらどうなるのか、を見てみました。
印刷条件の概要
・装置: Neptune4でハードウェアの変更は行っていません。
(標準のエクストルーダ、ホットエンド、0.4ノズルです)
・フィラメント: ELEGOO RapidPLA+(白)
・スライサー: Cura5.7.0 (OrcaSlicerでは、時短が難しいので見送り)
・積層ピッチ: 0.3㎜
・印刷温度: ノズル:220℃、ベッド:60℃
・印刷時間: 印刷後Fluidd画面に表示される、印刷時間結果
詳細なスライサー設定は後述しますが、汎用的なものではなくこの3D Benchyの形状に特化した設定としています。
最終の印刷結果
とりあえず、最終的に13分28秒で印刷したお船を見て頂きましょう。
何とか印刷できましたが、①の箇所では、角が崩れたりブリッジ部の垂れが目立ちますし、一番気になるのが②のオーバーハング箇所の乱れです。
②については、これでもスライサー設定を何度も修正し、少しは良くなったというのがこの状態ですが、これ以上の改善は速度条件を変えたりで、20分近くになってしまいそうなので断念しました。
Curaスライサーでの調整内容
スライサーの設定といってもたくさんの項目があって、何をどのように触ればよいのか本当に難しいです。
ここでは、素人レベルの私が試行錯誤でアプローチした内容を元に説明しますが、本音はプロの方のご指導を仰ぎたいところです。
1.印刷速度
前記事で「最大体積流量」について、テストした内容を紹介しましたが、私の装置でRapidPLA+の220℃では20という値でした。 この値で、積層ピッチ:0.3mm、積層幅:0.4mmとすると、
印刷速度(mm/s)=20(mm3/s)/0.3(mm)/0.4(mm)=166(mm/s)がボーダーラインと見込まれます。よって、この値以上が連続で続くような設定は物理的に出来ません。
このことを念頭に印刷速度設定をしています。
2.加速度、ジャーク設定
実績として、加速度:10000mm/s2(ウオール:5000)、ジャーク:20mm/sとしています。
3.壁厚、上下面厚設定
印刷時間削減のためには、出来るだけ薄くした方がよいのですが、最低限穴が開いたり弱すぎてもいけないので、壁厚:0.8mm、上面:3層、下面:2層で行っています。
4.インフィル設定
実は、この設定が一番難しかったのです。詳細は下記で説明します。
インフィル密度:2.5%、パターン:ライン
5.冷却設定
印刷時間削減のため、形状保持のために重要なファクターです。ファンはとにかく100%風力が必要です。そして、最小レイヤー時間:1.3secとしていますが、煙突部が型崩れしない最小時間設定です。
6.その他
サポートやブリム等の補助的なものは無しとしてます。
インフィル設定について
今回の設定値探しで一番勉強になったのが、インフィル設定でした。
なぜインフィルなのか? インフィルを無くして印刷できるのであれば、時間も早くなるし悩むことはないのですが、3D Benchyには落とし穴があってCuraスライサーでは、ズッポリはまってしまうのです。
(Orcaでは、うまいこと下層にブリッジが入り、パーツを保持するのですが・・)
下図はインフィルゼロ設定で印刷したものですが、赤○部の底が抜けています。
その原因は、インフィルゼロとすると、空中に浮いてしまう箇所なのです。
次の図を見て頂くとお解りだと思うのですが、最小限のインフィルを入れて、インフィルがサポート役となっています。
なので、どうしてもインフィルが必要になってくるのです。
そして、このインフィル設定には、他にも意味があって、まず船首下部の印刷乱れ部の内側サポートも兼ねていること、そして「インフィルラインの接合」という項目にチェックが入っていると、下図のような不規則なインフィルが追加されます。
これが薄い壁面には曲者でパーツ表面に不自然な乱れが出てしまいます。なので、このチェックは外しています。
まとめ
一応、Neptune4でも13分台で3D Benchyを印刷できました。ただ、これを良しとするか否かはあいまいです。
形にするだけなら12分台でも可能ですが、上面が破れたり乱れが酷いので省きました。
よって、ここではこの時間で印刷した結果として報告させて頂きました。元々3D Benchyは、印刷の品質評価のためのツールとして世界中に広まったと思っています。
一部の組織では、ルールをきっちり決めて印刷時間を競うモデルになっているのはよいのですが、一方で評価基準の曖昧な汎用機で印刷時間のモデルにするのは如何なものかというのが本音です。
皆様の評価や助言など頂けましたら幸いです。