GGの挑戦

3Dプリンターライフを楽しんでいます

【Neptune4 】3D Benchyの船を13分28秒で印刷してみた

 最近は3DプリンターNeptune4に関わる記事や、作品の紹介など気まぐれに投稿しています。

 前回の記事では「最大体積流量」について簡易測定方法など紹介させて頂きました。

 これまでも、印刷時間短縮に関わる内容をいくつか紹介していましたが、今回はこれらの集大成として(ちょっと大げさですが・・)3D Benchyの船がどこまで時間短縮して印刷できるのか、挑戦してみました。

 最近の超高速FDM3Dプリンターとして、Creality K1がこの3D Benchyを13分で印刷できるとして話題になっています。

実際の仕上がりがどの程度かはわかりませんが、そこそこ綺麗な仕上がりと思います。

 そこで、今回のテストは、手持ちのELEGOO Neptune4で同じような時間で印刷したらどうなるのか、を見てみました。

印刷条件の概要

 ・装置: Neptune4でハードウェアの変更は行っていません。

      (標準のエクストルーダ、ホットエンド、0.4ノズルです)

 ・フィラメント: ELEGOO RapidPLA+(白)

 ・スライサー: Cura5.7.0 (OrcaSlicerでは、時短が難しいので見送り)

 ・積層ピッチ: 0.3㎜

 ・印刷温度: ノズル:220℃、ベッド:60℃

 ・印刷時間: 印刷後Fluidd画面に表示される、印刷時間結果

詳細なスライサー設定は後述しますが、汎用的なものではなくこの3D Benchyの形状に特化した設定としています。

最終の印刷結果

 とりあえず、最終的に13分28秒で印刷したお船を見て頂きましょう。

 何とか印刷できましたが、の箇所では、角が崩れたりブリッジ部の垂れが目立ちますし、一番気になるのがオーバーハング箇所の乱れです。

②については、これでもスライサー設定を何度も修正し、少しは良くなったというのがこの状態ですが、これ以上の改善は速度条件を変えたりで、20分近くになってしまいそうなので断念しました。

Curaスライサーでの調整内容

 スライサーの設定といってもたくさんの項目があって、何をどのように触ればよいのか本当に難しいです。

ここでは、素人レベルの私が試行錯誤でアプローチした内容を元に説明しますが、本音はプロの方のご指導を仰ぎたいところです。

1.印刷速度

 前記事で「最大体積流量」について、テストした内容を紹介しましたが、私の装置でRapidPLA+の220℃では20という値でした。 この値で、積層ピッチ:0.3mm、積層幅:0.4mmとすると、

印刷速度(mm/s)=20mm3/s)/0.3(mm)/0.4(mm)=166(mm/s)がボーダーラインと見込まれます。よって、この値以上が連続で続くような設定は物理的に出来ません。

このことを念頭に印刷速度設定をしています。

2.加速度、ジャーク設定

 実績として、加速度:10000mm/s2(ウオール:5000)、ジャーク:20mm/sとしています。

3.壁厚、上下面厚設定

 印刷時間削減のためには、出来るだけ薄くした方がよいのですが、最低限穴が開いたり弱すぎてもいけないので、壁厚:0.8mm、上面:3層、下面:2層で行っています。

4.インフィル設定

 実は、この設定が一番難しかったのです。詳細は下記で説明します。

 インフィル密度:2.5%パターン:ライン

5.冷却設定

 印刷時間削減のため、形状保持のために重要なファクターです。ファンはとにかく100%風力が必要です。そして、最小レイヤー時間:1.3secとしていますが、煙突部が型崩れしない最小時間設定です。

6.その他

 サポートやブリム等の補助的なものは無しとしてます。

インフィル設定について

 今回の設定値探しで一番勉強になったのが、インフィル設定でした。

 なぜインフィルなのか? インフィルを無くして印刷できるのであれば、時間も早くなるし悩むことはないのですが、3D Benchyには落とし穴があってCuraスライサーでは、ズッポリはまってしまうのです。

 (Orcaでは、うまいこと下層にブリッジが入り、パーツを保持するのですが・・)

下図はインフィルゼロ設定で印刷したものですが、赤○部の底が抜けています。

 

その原因は、インフィルゼロとすると、空中に浮いてしまう箇所なのです。

次の図を見て頂くとお解りだと思うのですが、最小限のインフィルを入れて、インフィルがサポート役となっています。

なので、どうしてもインフィルが必要になってくるのです。

 

 そして、このインフィル設定には、他にも意味があって、まず船首下部の印刷乱れ部の内側サポートも兼ねていること、そして「インフィルラインの接合」という項目にチェックが入っていると、下図のような不規則なインフィルが追加されます。

これが薄い壁面には曲者でパーツ表面に不自然な乱れが出てしまいます。なので、このチェックは外しています。

「インフィルラインの接合」にチェックが入っている時

 

まとめ

 一応、Neptune4でも13分台で3D Benchyを印刷できました。ただ、これを良しとするか否かはあいまいです。

 形にするだけなら12分台でも可能ですが、上面が破れたり乱れが酷いので省きました。

よって、ここではこの時間で印刷した結果として報告させて頂きました。元々3D Benchyは、印刷の品質評価のためのツールとして世界中に広まったと思っています。

一部の組織では、ルールをきっちり決めて印刷時間を競うモデルになっているのはよいのですが、一方で評価基準の曖昧な汎用機で印刷時間のモデルにするのは如何なものかというのが本音です。

皆様の評価や助言など頂けましたら幸いです。

 

 

【Neptune4 】最大体積流量を簡単に測る(PLA+とRapidPLA+を比較)

 最近は3DプリンターNeptune4に関わる記事や、作品の紹介など気まぐれに投稿しています。

 3Dプリンターを使われる方にとって、是非とも把握して頂きたい用語として「体積流量」というのがあります。

最近の家庭用FDMプリンターのPRや評価では、印刷速度値(500mm/sとか600mm/sとか)ばかりが誇張されていますが、実際に印刷設定するには「体積流量」というものをしっかりと把握することが大きなスキルアップになります。

 今回の記事の主旨は、「手持ちのプリンター及び手持ちのフィラメントで簡単に最大体積流量を測ってみる」ということで、ELEGOO Rapid PLA+(高速対応)とELEGOO PLA+(強度アップ)でどの程度の差が出るのかという比較テストを例に紹介します。ELEGOO PLAは価格も安くて使われている方も多いと思います。

 今回紹介する方法は、下記のellis’ Print Tuning Guideのサイトを参考に、Neptune4をLAN経由で操作する環境で行っていますが、他機種においても共通する部分があると思いますので、是非試してみてください。

最大体積流量を測る方法としてCNC Kitchen

https://www.cnckitchen.com/blog/extrusion-system-benchmark-tool-for-fast-prints

などがよく紹介されていますが、mg単位まで計れる精密天秤が必要なため、ここではもっと簡単に簡易的に測る方法となります。

 尚、本テストは装置に直接コマンドを送るため、入力間違い等ないように、自己責任で行ってください。

体積流量と最大体積流量とは

 そもそも「体積流量(mm3/s)」というものを把握しなければいけません。

一般的に言われてる「印刷速度(mm/s)」との概算関係式は、

 体積流量(mm3/s)=印刷速度(mm/s)×積層幅(mm)×積層高さ(mm)

または

 印刷速度(mm/s)=体積流量(mm3/s)/積層幅(mm)/積層高さ(mm)

となります。

図で示すと次のようになり、分かり易いと思います。

体積流量のイメージ図

「体積流量」は、エクストルーダーの樹脂供給能力の指標となり、「印刷速度」は、X軸・Y軸の移動速度能力に樹脂供給能力を加えた指標となります。また、「移動速度」は樹脂供給を伴わないX軸・Y軸の移動速度となります。

 つまり、「印刷速度〇〇〇mm/s」という宣伝文句だけでは、移動速度能力と樹脂供給能力の中身が分かりません。ユーザーとしては、移動速度能力と受け取った方が無難だと思います。そこで重要になってくるのが、「体積流量」なのです。

 実際の「印刷速度」を設定する上では、「体積流量」の上限を超えて設定することはできませんし、設定出来ても印刷不良や装置トラブルになります。この「体積流量」の上限を「最大体積流量」といい、この値の目安を知ることで最高のパフォーマンスで印刷設定することが可能になるのです。

 Orcaスライサーではフィラメント毎に「最大体積流量」(「最大体積速度」という表現になってますけど・・)の設定項目がありますが、Curaスライサーにはその項目がありません。上記の関係式で「印刷速度」を算出、設定するしかありません。

最大体積流量の簡易測定の概要

 CNC Kitchenの測定方法は、実際にノズルから吐出される樹脂の量を計るという方法ですが、ellis’ Print Tuning Guideで紹介されているのが、フィラメントの送り出し量を目視で測るという簡易方法です。必要な物品は、物差しとマーキング用のペンまたはテープぐらいです。測定操作は、Fluidd画面上で行います。

 測定手順概要は、

1.エクストルーダー上面入口部からフィラメントの100mmのところにマーキングする。

2.Fluidd画面上から、指定フィラメント送り速度(mm/min)で100mmのフィラメントを送り出せという指令を出す。

3.フィラメントがどれだけ消費されたかを測る。

4. 1~3を速度を変えて繰り返す。

「最大体積流量」の判断:

消費量が減少し始めた所の送り速度(mm/min)から体積流量(mm3/s)に換算する。

つまり、フィラメント供給に抵抗が出始めたところを「最大体積流量」と見なそう、ということです。

また、「最大体積流量」は温度設定により異なりますので、フィラメントの推奨温度範囲で比較することも条件設定に役立つと思います。

最終的に得たい測定結果は、次のイメージになります。

指定した送り量(100㎜)に対して、実際に送り出した量がしきい値(98%、98mm)まで低下した時の体積流量値となります。

測定前に確認しておくこと

1.通常のフィラメント手動送り(パネル操作)で、100㎜設定で100㎜送る状態であればよいのですが、もし過不足があれば送り量の設定パラメータを修正することをお奨めします。修正方法は、過去記事を参照してください。

 

ggblog.hatenablog.com

 

.機種によっては、100mm設定できない可能性もある(Neptune4ではOK)ので、Printer.cfgの[extruder]セクションのmax_extrude_only_distance設定値を101以上に設定する必要があります。

3.参考値として予め使用するフィラメントについて、スライサーでのプロファイルで確認できる「最大体積流量」設定値を調べておく。

 例として、OrcaスライサーでNeptune4の場合は下表のような値が設定されています。実測値の予測としては、この値より高い値になるはずです。尚、この値は機種によって異なりますので、ご自身の装置に合った目安値をきめてください。

測定計画

 実際の測定前に測定計画を立てます。

 今回測定するのは、手持ちのELEGOO PLA+とRapid PLA+の2種類とする。

 温度設定は、フィラメントスプールに記載された範囲内の200℃、210℃、220℃、230℃とする。

 フィラメントの送り速度設定値を、350mm/minから50mm/min刻みで測定する。※機種により異なります。

  (体積流量に換算すると14mm3/sから2mm3/s刻みでの測定となります)

測定手順

 まず最初にプリンターの電源を入れて、LAN経由でFluidd画面を表示しておきます。

 ノズルを加熱して、測定用のフィラメントをセットしておきます。

 ノズルの温度設定をして、いよいよ測定開始です。

 ① Fluidd画面の「コンソール」の下のコマンド送信の欄があるので、まず、「M83」というコードを入れて、送信ボタンを押します。

  これは、エクストルーダの相対送り出しモード設定になります。

② フィラメントの100mmのところにマーキングを入れます。

 次にFluidd画面のコマンド送信の欄に、「 G1 E100 F350」を入力して、送信します。これは、「送り速度350mm/minで、100mm送れ」という指令になります。

(※Neptune4の場合となります)

ノズルから樹脂が吐出されます。

マーキングした位置が入口付近で止まります。

入口からどれだけ残っているかを物差しで測り、消費されたフィラメント長さを測定値とします。

測定結果

 測定結果は次の通りでした。

上記の測定結果から、フィラメント供給が低下し始めたポイント(黄色枠)の体積流量を最大体積流量と見なし、その値を下表にまとめました。

考察

 測定結果から、Orcaスライサーで設定されていた最大体積流量より、やや高めに設定できる感触が得られましたし、温度設定による変化も明確となりました。

 そして驚いたことに、Rapid PLA+の方が高い値になることを期待したのですが、残念ながら当テストでは、高速印刷対応を実感できませんでした。200~210℃では、PLA+より高いようですが、220~230℃では、PLA+より下回りました。別の言い方をすれば、PLA+より温度変化の影響が小さいという感じでしょうか。

 尚、今回のテストは、ノズル出口がフリーで抵抗のない吐出状態ですので、実際の印刷での押し付けることによる抵抗を考慮すると、少し少なめの設定が良いのではと思います。

まとめ

 今回は、最大体積流量を簡単に測定出る方法として紹介しました。たくさんの測定ポイントがあって面倒くさそうですが、上記のテスト時間も1時間掛からなかったと思います。

 印刷の品質を落とさずに印刷時間を短縮する一つの要素としてこの最大体積流量の把握は大きな意味があると思います。少しでも皆様の参考になれば幸いです。

 

追加比較(最短時間印刷)

 Rapid PLA+とPLA+のベンチマーク印刷も行ってみました。違いが出易いように、普通の印刷では面白くないので、Curaスライサーを使って最短時間を目指したもので、ハードの変更はせずに設定のみで実印刷時間:15分41秒でした。ノズル:真鍮0.4mm、積層ピッチは0.3mm、温度:230℃、冷却:100%諸々です。

 

左:PLA+         右:Rapid PLA+

実用的ではない短時間印刷のため、仕上がりはいずれも粗いですが、船首部下のオーバーハング部の乱れがRapidPLA+の方がやや少ないといった違いぐらいかな。RapidPLA+は少し色白でつるっとした表面です。私にはそれぐらいしか区別がつきません。

 

 

【Neptune 4】Curaスライサーから直接プリンターにデータ送信

 最近は3DプリンターNeptune4に関わる記事や、作品の紹介など気まぐれに投稿しています。

 3Dプリンターのスライサーソフトとして、多くの方がUltimaker Curaを使われているのではないかと思います。(NeptuneユーザーならELEGOO Cura5.6.0かな?)

私もUltimaker Curaを使っているのですが、最近ではOrcaSlicerの方が使い易く、便利な機能もありメインスライサーにしています。

ただ、Curaの方が印刷時間も短くなり(感覚的にOrcaの70%位)使い分けしながら使っています。

 OrcaSlicerでは、作成したgcodeデータを直接プリンターに送信し、スライサーの中でプリンターをFluidd画面でモニター・操作することが出来るので非常に便利です。

 Curaスライサーではこんなことできないし、gcodeデータを「フォルダーに保存」→「ブラウザー起動」→「プリンターに接続(Fluidd画面)」→「gcodeデータをアップロード」→「印刷開始」という手順で使っていました。

 Curaの場合これが結構面倒で色々調べてみました。Curaでもgcodeデータを直接プリンターに送信できる方法があるということが解り早速組み込み、うまく機能することが分かりましたので紹介します。

 Curaスライサー内でプリンターをモニター、操作することはできませんが、データをフォルダーに保存するというひと手間が省けるだけでも作業性が大きく変わってきます。

 組み込み方法は簡単ですので、Neptune4をLAN経由で操作されている方は是非お試しください。

 尚、Ultimaker Curaは最新の5.7.0に更新して使っています。

 5.7.0では、Neptune4シリーズのプロファイルも追加されているようですね。

 ELEGOO Curaも5.6.0に更新されていますので、そちらを使われてている方も多いのでしょうか。いずれのスライサーでも同様に組み込めます。

 

組み込み手順

 まず、Curaを起動します。

 画面右上にある「マーケットプレース」に入ります。

 プラグインの一覧を下にスクロールして「Moonraker Connection」を見つけます。

こちらをインストールします。

 

 同意書の確認があり、同意すれば「承認」を押します。

承認した後、「インストール」のボタンが「アンインストール」に変わればインストール成功です。

インストール後Curaを再起動します。プリンターも電源を入れて、LAN接続状態にしておきます。

続いて、Cura内でのプリンター設定を行っていきます。

まず、「設定」→「プリンター」→「プリンターを管理する」と進みます。

次の画面で、「Connect Moonraker」といのが新設されていますので選択します。

connect Moonrarkerの設定を行います。

LANで接続したNeptune4のIPアドレスhttp://192.168.*.*/)を入力して、「Create」を押します。

これで組み込み作業は終了です。

 

使い方は、まず通常スライス作業を行い、STLデータをスライスします。

スライスが終わって、右下の「ディスクに保存する」に「V」のマークが追加されていますので、ここを押します。

「Upload to ELEGOO NEPTUNE 4」が表示され、実行します。

「Upload」で、直接プリンターにgcodeデータが送られます。

「Start print job」にチェックを入れると、アップロード後すぐに印刷を開始します。

「アップロードが成功したよ」という表示がでて、「Open Browser」を押して閉じます。

 別途ブラウザを開いてプリンターに接続すると、Fluidd画面の「印刷ジョブ」にデータが入っています。

 後は通常のFluidd画面操作で印刷開始、監視が行えます。

まとめ

 少しの手間を省けるだけですが、gcodeデータをフォルダーに保存して、そこからプリンターにアップロードするという操作は、結構面倒です。

 これで、OrcaSlicerと同様にフォルダー保存を介さずに、「デザイン」から「印刷開始」までの手順を行えるようになり、気分的にもすっきりしました。

 残念ながら、Cura内にある「モニター」ではUltimakerのプリンターしかサポートされてないようで、別途ブラウザーからプリンターに接続してモニターする必要はありますが、少しでも便利になったことはありがたいです。



 

 

 

 

 

 

 

【Neptune 4】印刷時間短縮を目指して(2)Orcaスライサー

 最近は3DプリンターNeptune4に関わる記事や、作品の紹介など気まぐれに投稿しています。

 この1年間のFDM3Dプリンターのトレンドといえば、超高速高温印刷しかも低価格というのが当たり前になったというところでしょうか。今も500mm/sだの600mm/sだのとスペックを競うようなPRや紹介動画などがあふれています。

 そんなスピード値ばかりが強調されて比較評価されている風潮は如何なものかと思ってしまいます。 いきなりボヤキから入ってすみません。

 実際使っている人は分かってるとは思いますが、本当に重要なのは、「短い時間で良い品質の印刷をしたい」ということだと思います。

 ということで、今回の内容は「印刷時間短縮を目指してVol.2」です。過去記事でもOrcaSlicerの印刷時間短縮に関する記事を掲載していました。

 

ggblog.hatenablog.com

今回もOrcaSlicerを使って、追加テストを行った内容を紹介いたします。

尚、ノズル径や積層ピッチは変えずに行います。

 

テスト内容

 過去記事ではお船ベンチマークサンプルを使ってのCuraスライサーに近づけようという試みでした。いくつかの注目点も紹介しましたが、通常の印刷の場面では紹介できていない更に重要な改善点もあります。

 今回は、ブリッジ構造の印刷におけるサポートの仕方で変わる印刷時間について見ていきます。

まず、テスト用のサンプルは、下図の四角のお皿をひっくり返した形状で、薄いTOP面に広いブリッジ構造としています。

  材質はPLA(黒)装置はNeptune4となりますが、他機種でも参考にして頂ける点もあると思います。

 スライサーOrcaSlicer2.0.0での設定内容で、印刷時間がどのように変わり、仕上がりがどうなるかという内容になります。

 様々な印刷パーツや設計段階での印刷方法想定などで参考にして頂ければ幸いです。

デフォルト設定での印刷

 OrcaSlicerNeptune4、汎用PLAとして、初期設定で通常サポートを付けてスライスした時の画面です。

字が小さいのと表示されてない項目もあり、「サポート」設定内容とスライス結果のところを拡大します。

なんと、印刷時間が17分15秒(赤枠部分)も掛かってしまいます。(赤破線枠は後の説明に使います)

とりあえず、これで印刷してみます。

 時間を掛けた割には、表面の中央部辺り(赤○部)に、モヤーとしたムラが気になります。裏面から見た内部の樹脂の流れはきれいです。実はこのムラ、神出鬼没で強くなったり弱くなったり、後ほどこのムラについて補足説明します。

 さて、何に時間を要したのでしょうか?特にブリッジサポートサポート接触面に時間を要しています

よって、これらの意味合いを理解すれば、目的の印刷物に必要か否かの判断を行って、付けたり外したり、増やしたり減らしたりすることで、印刷時間の増減に大きく関わってくるのではと考えています。

 各面の構成を下図に示します。

OrcaSlicerでは各積層面についての設定内容があり、デフォルトでは、綺麗な仕上がりになるような丁寧な設定になっていると思っています。

各面の必要性としては、次のようなことかなと思います。

・TOP面最上面なので、一番綺麗にしたい面

・内部ソリッド インフィル:「強度」のTOP面層数に含まれているのですが、OrcaSlicerでの不思議な扱いの面です(過去記事参照で問題提起)

・ブリッジ面ブリッジ部分の最下層で、綺麗に仕上げたい面(なので、メッチャ遅い印刷速度になっています)

・トップ接触ブリッジ面を支えつつ、剥離性をよくするための面(丁寧に2層もあります)

・1層目面サポートパターンを支えるための面(ほぼべた塗です)

 

 Curaでの印刷

 印刷時間比較のため、Curaでも同じようなスライス条件にしてみました。

 サポートはグリッド15%です。

これで印刷時間が、8分30秒OrcaSlicerの約半分です。

スライサーのプレビューで見ると、OrcaSlicerのようなトップ接触面も1層目面もありませんし、ブリッジ部の印刷も速いです。8分台は当然の結果ですね。

 実際の印刷は、TOP面にサポートと同じラインのムラが目立ちます。OrcaSlicerのムラとは異なります。

Orcaslicerで最適化した印刷

 印刷時間短縮とTOP面の綺麗さを求めて、OrcaSlicerの設定を色々変えてみた結果、下図のような設定で落ち着きました。

何と!印刷時間が9分7秒とほぼ半減し、Curaとほぼ同じぐらいになっています。(実時間も同じでした。)

 

「速度」の項を次のように変更しています。

・加速度、ジャークCuraに近い値としています。 ---時間短縮

ブリッジの速度Ext.20→100、Int.70→100にUP  ---時間短縮

 

「サポート」の項を次のように変更しています。

・1層目密度:貼り付き良好なので、90%→10%に変更 ---時間短縮

・サポートの基本パターン直線→直線グリッドに変更

                  (後のムラ説明に関係します)---強度UP

・基本パターン間隔2mm→6mmと広げる ---時間短縮

・パターン角度0°→45°に変更(当サンプルの場合)---ブリッジ面の安定化

・トップ接触面の層数2層→1層に変更 ---時間短縮

 

そして印刷した結果が、以下となります。

表面の嫌なムラもなくきれいな仕上がりです。

サポートを外した裏側の状態を設定変更前と後で比較してみました。

 変更前の時間を掛けて印刷した方が綺麗ですが、右側の状態でも問題ない用途であれば使えるのではないでしょうか。サポートの取り外しは、確かに接触面2層の方が簡単でした。

 

TOP面ムラの考察

 上記のデフォルト印刷でのTOP面に僅かのムラがあると説明していましたが、実はもっと酷いムラになったこともあり、その原因が分からずに悶々としていました。特にOrcaSlicerで発生し、Curaではあまり見ないムラだったので、OrcaSlicerに何らかの要因があるはずと思っていました

下のサンプルは、1.2mm厚でテストしていた時に発生したムラです。結構酷いでしょ。

 そして、今回のテストは実はこのムラ要因探しも主目的だったんです。

印刷速度との関わり?共振等による影響?というのが思い当たるんですが、Curaで出現しないということからOrcaSlicerの設定を調べていました。

 そして、恐らくこれではないか、という項目を見つけたので一応紹介します。尚、ムラは神出鬼没で確証が取れず、今後の印刷作業の中で確認していきます。

 問題と思う点は、OrcaSlicerの「サポート」の「基本パターン」なのですが、デフォルトでは「直線」となっています。

スライスした結果は、当記事の最初のプレビュー画面で、平行に並んだサポートになっています。このパターンって横方向の力に極めて弱く、不安定なパターンと思います。この不安定要因がムラに繋がる原因ではないかというのが今回の推察です。

 因みにCuraでのサポートパターンに、このような並列直線だけのパターンはありません。(同心円には一部にある)

この違いを要因と考えると発生有無の違いとも合致します。

とにかく、ここでの結論は、サポートパターンに「直線」ではなく「直線グリッド」を選びましょう、ということです。

グリッドであれば、前後左右方向に強くなり、印刷時間も若干延びる程度です。

 

まとめ

 OrcaSlicerにおける印刷時間短縮と品質改善ということに注目して、ブリッジ構造での改善方法を紹介してみましたが、お役に立てそうでしょうか?

 まだまだ他にもプロの方のノウハウも知りたいところです。

 私、出費も抑えて個人の趣味レベルで遊んでいる身分ですので、ノウハウの蓄積も少なく是非皆様のご意見もお聞かせください。

今後も小ネタを見つけて紹介していきます。

 

 

 

 

【Neptune 4】Fluidd画面にWebカメラを追加しました

最近は3DプリンターNeptune4に関わる記事や、作品の紹介など気まぐれに投稿しています。

 3Dプリンターを使っていて、離れた場所から印刷状態をカメラを通して監視するというのは、何も珍しいことではなく多くの方が既に実践されていると思います。私も、TP-Linkの安いカメラで常時監視しながら、Neptune4をLAN経由のFluidd画面での印刷状況監視も合わせて行っていました。

 Fluidd画面の中には、Webカメラ映像も組み込める機能があるのですが、使い方もわからずTP-Linkで用は足りているので必要性も感じなく両方を起動して監視していました。

 YouTubeでよく目にするのが、Fluidd画面内でのカメラ映像で、確かに一元化してしまえばFluidd画面監視だけで用は足りるなあ、これは便利、ということでFluidd画面にカメラ機能を組み込んでみました。とりあえず、正常に運用できましたので紹介します。

 Webカメラは、何年も前に買って、使わなくなっていた格安品のLogicoolのC270nですが、これを繋ぐことにしました。

 尚、今回の記事では、カメラ画像を表示できるまでのプロセスを紹介するもので、接続可能なカメラ選びや有効なカメラ活用のためのカメラ自体の性能、適切な取り付け方などもあり、ここでは紹介出きていません。取付用のアームは後日製作予定です。製作しました。(4/2更新)

接続方法の概要

 簡単に接続したいと思ったのですが、結構ややこしそうで、中でも最も簡単な方法として紹介されていたのが、RedditユーザーのWebカメラ接続に関する質問へのUnpreparedZergさんのコメントがあります。

https://www.reddit.com/r/ElegooNeptune4/comments/15pjbef/webcams_and_neptune_4pro/

 

「なんのこっちゃ、さっぱり分からん」と、思いますよね。

(でも、良くまとまってるんですよ)

PrintablesサイトのOrzOrzOrzさんの記事で、もう少し詳しく、説明されています。

https://www.printables.com/model/668824-elegoo-neptune-4-pro-webcam-guide

 要するにPuTTYというアプリを使ってプリンターにSSH接続し、カメラを有効化して、Fluidd画面内でカメラをアクティブにする、という流れのようです。

PuTTY?私も初耳でした。とりあえず、これを導入するしかありません。

PuTTY のダウンロード

PuTTY を下記サイトからダウンロードします。

https://www.putty.org/

続いて、ダウンロードするファイルの種類を選択します。私の場合は、Windowsの64bit版を選択しました。

次のファイルがダウンロードされます。

ダブルクリックでインストールを実行します。

次に進みます。インストール場所に変更がなければ、インストールを開始します。

選択画面で、ディスクトップにショートカットを置きたい場合は、×のところを外せばよいと思います。

インストールの終了画面です。

PuTTY を起動

 先に、予め Neptune4の電源をONとして、前面にあるUSB接続口に、Webカメラ(C270n)を接続しておきます。

 作成されたショートカットまたはインストーされたPuTTYのファイルから、putty.exeを実行します。

 

PuTTYを起動すると、次の画面となり、ご自身のプリンターのIPアドレスを入力します。

デフォルトでSSH接続となっているので、このまま進めます。

尚、この画面では入力したIPアドレスを保存することも出来るのですが、このまま進めます。

最初は警告画面も出ますが、「同意」(accept)して進みます。

ログイン画面となり、login as:に「mks」、password:に「makerbase」を入力します。

パスワードは表示されません。ログインできると次の画面になります。

ログイン情報が出た最後に、コマンド入力待ちとなりますので、ここで

sudo systemctl enable webcamd」(webカメラを有効にして)を入力します。

続いて、パスワード「makerbase」を再入力します。

下記画面は何度かパスワード再入力してしまいましたが、入力要求されなければOKと思います。

sudo systemctl start webcamd」(webカメラを起動して)と入力します。

終了するときは「exit」で終了します。

PuTTYからの設定は以上です。

fluidd画面での操作

 ブラウザーから、Neptune4に接続しfluidd画面を起動します。

「設定」「カメラ」「カメラの追加」を実行します。

「カメラ追加」で、適当な名前(必須)を付けて「追加」を押します。

「ホーム」の画面に戻り、カメラ画像が表示されれば成功です。

カメラ取付アームの作成(4/2更新)

 画像表示に成功したら、カメラの取り付けになるのですが結構悩みます。

印刷作業の邪魔にならず、しっかり映る場所なんですが、近距離では造形品がぼやけてしまいます。結局、次のような取り付けにしました。

 映像もぼやけてしまいますが、印刷トラブル監視には十分かなと思います。

Webカメラ取付状態

取付状態でのカメラ映像

まとめ(4/2更新)

 接続が成功して、カメラ位置もほとんど邪魔にならず、快適に運用できそうです。

家に眠っていたカメラを活用できたのが嬉しいですね。

 今回は、LogicoolのC270nで接続に成功したのですが、他機種でも成功することを願ってます。是非お試しを。

 

 

 

【Neptune 4】ファームウェアをアップデートしました

 最近は3DプリンターNeptune4に関わる記事や、作品の紹介など気まぐれに投稿しています。

 ELEGOO Neptune 4を購入したのは、昨年(2023年)7月でした。発売されたばかりのこの機種の凄い性能・機能に驚き、しかも安い!ということでの即買いで、今もメインマシンとして愛用しています。

 これまでも当ブログでは、いくつかの改良点などを紹介してきましたが、基本となるファームウェアのアップデートをしていませんでした。アップデートは、バグフィックスや機能拡張など、本来なら初期バージョンの装置なので是非更新すべきなんですが、そこそこ満足して使っているので必要を感じず放置していました。

 最近になってふと、「ブログを公開してるのにアップデートもしてないなんて・・」という思いで、やってみることにしました。

 尚、当記事はアップデートファイルに含まれる手順書(NEPTUNE 4-Firmware update instructions -V1.3.pdf)に沿って行った内容を紹介していますが、トラブル時や不足事項は原文や他のネット情報をご参照ください。

あくまでも自己責任で行って下さい。

Neptune 4/Proの最新バージョン情報

 アップデートファイルの中のUpdate log-4_4PRO.txt内容から直訳します。

アップデートは必要?

 ELEGOOでは、現在のファームウェア バージョンが 1.1.2.53 より前の場合タッチパネルのバージョン1.2.11より前の場合にアップデートを推奨しています。

 確認方法は、タッチパネル【設定】→【インフォメーション】で確認できます。

アップデートは効果的?

 上記更新ログ(直訳です)だけ見ても、さっぱり分かりません。アップデート後に分かる明確な違いは、121点のみのオートレベリングが36点と121点の選択が可能で、通常は36点選択になっています。36点で十分なんですけどね。

アップデート前に準備確認すること

 アップデートを実施すると、全ての調整・設定データが初期化されるので、特にオートレベリング調整、Z-Offset調整をアップデート後最初に必要になることを念頭において下さい。

 まず、Neptune4を操作する環境として、LAN接続してfluidd画面が表示できる環境が良いと思います。

fluidd画面の【システム】でディスク情報にあるディスク空き容量が500MB以上あることを確認しておきます。

少ないとアップデートが行えないようです。

 手順書には、アップデートすると「ローカル・メモリー内のタスク・リストの内容が自動的に削除されるので、必要に応じて事前にバックアップして」とあるのですが、さて、何をどのようにバックアップするのか?

 多分、【Configuration】の中のファイルのことだと思います。

 私の場合は、printer.cfgの内容を何箇所か書き換えていましたので、最低限これだけは必要でした。(適当にいくつかダウンロードしましたが、printer.cfgが書き換わってしまったので正解でした。)

 アップデート作業には、Ender-3の付属品で使っていなかったmicroSDカード(512MBファイルシステムFAT32アロケーションサイズ4096)USBアダプター対辺2mmの六角レンチを用意しました。

アップデートデータを入手

 ELEGOOホームページの【support】【Download Center】Neptune4を選びます。

 Firmwareところの「V1.1.2.53」を選びます。

 

NEPTUNE 4 - APP_V1.1.2.53-UI_1.2.11-20231215-EN.zip」をダウンロードします。

ファイルを展開すると、次にようなファイルがあります。

アップデート作業の開始

 展開したファイルでアップデートを始めていきます。

まず、上記ファイル内に「1.2A」と「0.8A」のフォルダーがあり、いずれかを選択するのですが、装置のバーコードに記載された番号で選択するようです。

私の場合は、NEP 4.236でしたので、0.8Aを選びました。

そのフォルダー内容は、次の3つのフォルダーに分かれており、必ずFix packから実行するようです。各フォルダーの内容が右側のデータです。

① Fix packのアップデート

 最初にFix packから実施していきます。「Fix pack-NEPTUNE 4-APP_V1.1.2.53-UI_1.2.11」のフォルダー内にあるELEGOO_UPDATE_DIRのフォルダーをそのままUSBメモリー(USBアダプターにmicroSDカードを挿したもの)にコピーします。USBメモリーには他のファイルは入れません。このフォルダーには次のようなファイルが入っています。

 プリンターの電源を切り、このUSBメモリーを前面のUSBポートに差し込みます

この状態で、プリンターの電源を入れます。

すると、自動的にFix packのアップデートが始まります

ELEGOOのロゴマーク状態がしばらく続きますが、最終的には、通常にメイン画面で終わります。

 途中、記録を撮り損なったのですが、Klipper関係の画面の様な表示(手順書にはない)で、4つほどの選択ボタンが出て、(焦ってて)前に進めるようなボタンを押したつもりです。(記憶が定かでなくて・・・)

 とりあえず、終わったところで、USBメモリーの内容をPCで確認しました。

このファイルが出来ていれば、Fix packのアップデートは成功のようです。

② Firmware packのアップデート

 Fix packのアップデートが終われば、続けてFirmware packのアップデートを行っていきます。尚、独自で公式の Klipper、Moonraker、fluiddなどの更新や拡張のサポートを受けている方は、先に入手した方がよさそうです。(私は標準で進めていきます。)

 では、USBメモリー内のデータを一旦削除して、新たに「Firmware pack-NEPTUNE 4-APP_V1.1.2.53-UI_1.2.11」フォルダー内の「ELEGOO_UPDATE_DIRのフォルダーをそのままUSBメモリーにコピーします。(Fix packの時と同じ名前なので混同しないようにね)

 USBメモリーの内容は、「ELEGOO_UPDATE_DIR」の中に下図のようなファイルが入っています。

 プリンターの電源がONで、通常のメイン画面が表示されている状態USBメモリーをUSBポートに差し込みます。

 タッチパネル操作で【設定】【インフォメーション】表示し、下の矢印ボタンを押します。

 アップデートが終了すると、通常のメイン画面に戻ります。USBメモリーの内容をPCで確認すると、「update.log」というファイルが追加されています。これでアップデートは成功のようです。

③ タッチパネルのアップデート

 Fix packのアップデート、Firmware packのアップデートを行った後に、タッチパネルのアップデートを行っていきます。

 まず、USBメモリーをPCに差し込み、内部のデータを削除した後に、「Screen firmware(UI)-1.2.11」フォルダー内のui_1.2.11_231012.tftファイルをUSBメモリー(実際には、microSDカード)にコピーします。

 このmicroSDカードを使って、タッチパネルのアップデート作業を行っていきます。

まず、装置本体に接続しているタッチパネルのケーブルを取り外します。

更に、タッチパネルの裏ブタを六角レンチ(対辺2mm)で取り外します。

基板にmicroSDカード用のスロットがあるので、そこへ挿し込みます。

裏ブタを仮止めして、ケーブルを本体に接続します。

接続すると、直ぐに次のような画面になって、アップデートが始まります。

アップデートが成功すると、次の表示となります。

再びケーブルを抜いて、裏ブタを開け、microSDカードを取出し、裏ブタを付けてケーブルを挿すと通常の表示に戻ります。

【インフォメーション】画面で「液晶版 1.2.11」になっていればOK(すごい日本語訳ですね)

アップデート完了後の作業

アップデートが完了すると、プリンターの設定値が初期化されてしまうので、まず、オートレベリング作業を行います。オートレベリングは36点測定が標準となり、121点測定も選択できるとなっています。私は、36点で十分です。所要時間も短いですしね。

 その後にZ-Offset調整を行い、基本的には印刷を行うことが出来ます。

 私の場合、Printer.cfgの内容を一部書き換えていましたので、バックアップしていた旧Printer.cfgから書き写して、目的の動作に復旧できました。

まとめ

 ファームウェアアップデートは、ハードルが高いなあと思っていましたが、要領が分かってしまえば比較的簡単に出来たと思っています。

日本語での解説記事が見当たらず、紹介してみました。不十分な点お許しください。

 尚、アップデート中に発生する不具合動作については、元の手順書の後半に「FAQ」もありますので、ご参照ください。

今回は以上となります。

 

【Neptune 4】印刷時間短縮を目指して Orcaスライサー/Curaスライサー

 3Dプリンター(Ender-3,Neptune4)に関わる記事や、作品の紹介など気まぐれに投稿しています。

  前々回の記事で、「Neptune4用のスライサーソフトにOrcaSlicerを使ってみて」っていう記事を載せていました。非常に使い易くて、是非推奨するスライサーなんですが、1点「ん~」と思われた方もいらっしゃるかもわかりません。

 恐らく、記事の中でCuraとの印刷比較をしたのですが、印刷時間がCuraの1.6倍程印刷時間が掛かったという結果で終わっていました。
 このままだと、単純に「OrcaSlicerは、印刷が遅い」という先入観を与えてしまったと反省しています。

 そこで今回は、その印刷時間をもう少し深堀して、早くて綺麗な印刷条件を見つけてみようと試みました。

 「スライサーソフトの細かいところの設定はよう分からん」とお思いの方もたくさんいらっしゃると思います。実は私もそうだったので、要点だけをお伝えして、後は皆さんの習熟にお任せします。

単純な印刷設定

 よく言われる最も基本的な印刷時間短縮方法には、次にのようなことが挙げられます。

 ・印刷速度設定を上げる    : プリンター能力次第
 ・充填率(インフィル)を下げる: 部品の内部強度に関わる
 ・壁厚・上面底面厚を薄くする : 外面の部品強度に関わる
 ・積層ピッチを大きくする   : フィラメント吐出能力次第、表面粗さに関わる
 ・ノズル径を大きくする    : フィラメント吐出能力次第、表面粗さに関わる
 ・ホットエンド部を改造する  : フィラメント吐出能力を上げる

 これらのことは直感的にお分かり頂けると思います。

 ここからは、装置の改造は行わずに、スライサーの設定で出来うる上記以外の要因について見ていきましょう。

印刷速度だけを上げても印刷時間は頭打ち

 スライサーソフトを使っていて、多くの方が「印刷速度設定を上げても、印刷時間はそんなに早くならない」と感じていると思います。
 その原因は、スライサーソフト内でプリンタのメカ的な能力を超えないように、自動的に制限が掛けられているからなんです。

3Dプリンターの基本構造

 ここから本論に入っていくのですが、まず一般的なFDM式3Dプリンターの原理や装置構造の基本から見て、印刷速度に関わるところは、

印刷速度に関わる主な着目点

 更には、それらを制御するファームウェアや筐体の剛性なども印刷速度に関わってきますが、この記事では触れていません。

スライサーソフト内でどんな制限があるのか

 スライサーソフト内には、機種を選択した時やフィラメントを選択した時に自動的に設定される制限値(デフォルト値)があります。
 それらの値は、市販されている大抵のフィラメントにも適用出来るように制限が掛けられていると私は思っています。
 また、スライサーソフトも進化していて、より綺麗に印刷するための機能が付加されていることで、印刷時間が延びることもあります。
 要は、自分が使っている装置で、これらの制限をどれだけ緩和することが出来るのかということです。

OrcaSlicerとCuraでの印刷時間の違い

 これは前々回の記事で比較したお船ベンチマークで、同じような印刷条件にて、印刷時間がCuraで26分、OrcaSlicerで43分と大きな差となりました。この違いはどこにあるのか、OrcaSlicerでも早くならないのか?
 そんなきっかけでスライサー内部の設定値を比較してみました。
上記の①~③の要素を主体に、順追って確認していきます。

比較環境

 印刷時間比較するにあたって、主な共通設定内容は下表の通りです。

最初の印刷時間比較

 上表の設定で、スライサー後の印刷時間表示を示します。(実測ではありません)

 やはり、OrcaSlicerの方が1.5倍程時間が掛かっています。この時間を基本として、以下の設定変更による変化を順次見ていきます。

変更1:加速度とジャークの変更

 いきなり難しい内容と思われたらいけないので、簡単に用語の意味を説明しておきます。設定項目の中に、加速度(Acceleration)ジャーク(Jerk)というのがあります。これは各軸を駆動するステッピングモータの動作速度に関わる要素で、まず、下図のモータ動作パターンをご覧ください。

ステッピングモータの台形駆動(出典:オリエンタルモータ)

 モーターはパルス信号で動くので、速いパルス速度程スピードが上がります。ただ、いきなり速いパルス速度の信号を送っても追従してくれませんし、追従したとしてもメカに大きな負荷が掛かってしまいます。これをスムースに運転パルス速度(「印刷速度」に当たります)に導くために、起動パルス速度(「ジャーク」に当たります)から駆動を開始して、加速(「加速度」に当たります)をつけて運転パルス速度にもっていきます。止まる時も同じように減速してから止まります。
この内容は、メカの構造や能力で上限が決まってきます

そこで、OrcaSlicerとCuraで比較すると、下図のように設定値に違いがあります。

加速度値とジャーク値の比較

小さい字で見えにくいですが、Curaの方が速い設定となっています。Curaの設定で問題なく運転できるのであれば、OrcaSlicerでも同じ設定でもいいのでは・・、と思いますよねぇ。
ということで加速度値を書き換えてみました。次にジャーク値を換えようとしたのですが、上限を超えてるという警告が出ます。

警告文

 そこで、プリンター設定を次のように変更します。(自己責任で行ってください)

これで、ジャーク値を20mm/s以内で設定できます。

 OrcaSlicerでの変更後の印刷時間を見てみます。スライス後の結果は、38分22秒(8分の短縮)になりました。
 Curaでも「ジャーク制御」をONにすると、スライス後の結果は、28分(3分の短縮)になりました。

 その差はまだ10分以上あります。
かなりの短縮にはなりましたが、まだ何か大きな違いがあるはず・・・・。

【2024/4/11追記】

初期のELEGOO Curaでは、加速度は3000mm/s2(移動は5000mm/s2)、ジャークは20mm/s

新しいELEGOO Cura5.6.0では、加速度は5000mm/s2(1層目は500mm/s2)ジャークは9mm/s

になっていますので、当テストでの値は高すぎる可能性があります。

メカの安全・安定のため変更値は参考扱いとしてください。

大変申し訳ありません。

【追記終わり】

他に大きな違いはないのだろうか?

 上記で述べました「体積流量」や「冷却」に関しても印刷速度に大きく関わるのですが、実際の印刷品質やノズル詰まりなどのトラブルにも関わるので、後ほど確認していきます。
 なのでその他に違いはないのかとプレビュー画面を比較すると、大きな違いが見つかりました。

プレビューで31層辺りの船の先端辺りを見てみます。

OrcaSlicerでのプレビュー画面

Curaでのプレビュー画面

 つまり、OrcaSlicerでは、指定した壁厚の2層よりももう1層内側に出来ています。これが、「内部ソリッド インフィル」というもので、自動的に付けられるようです。

(インフィル0%にするともっとよく分かります)

内部ソリッド インフィルを取ってみる

 薄い壁の仕上がりを補強して、しっかりした面を形成できるようにしたもののようですが、時として不必要なお節介になることもあります。これによって、印刷時間も延びてしまいます。
なので、この機能を外してみます。

「強度」のところの一番下に「壁の厚さを確保」という項目があります。

この設定を「無し」にすることで「内部ソリッド インフィル」をほとんど無くすことができます。

そしてプレビューを見てみると、

「これは素晴らしい発見だ!」 と思って印刷してみました。
印刷時間はスライサーでは、36分17秒でしたが、実際の印刷時間は38分掛かりました。(微妙な短縮です)
そして、印刷物を見て愕然としてしまいました

 スライサーでのプレビューで見ても1層しか乗っていません。(4層設定なのに・・・)
しかも、上面底面厚を5層、6層にしても、1mm、2mmにしてもプレビューで見ると1層しかありません。

「これどういうこと? バグ? 設定の問題?」

net情報を色々調べてみると、どうやらこの「内部ソリッド インフィル」については問題もあるようで、スライサー内部のアルゴリズム改善を望むしかなさそうです。

 要するに、問題は複雑で現状では「内部ソリッド インフィル」の機能を付けるしかありません。
印刷時間短縮にも今回は特別大きな貢献もなかったし、この試みは失敗ということでした。

体積流量について

 OrcaSlicerの設定を色々いじっても、他に大きな印刷時間短縮になるような設定もわかりませんでした。

 結局は「体積流量」「冷却」に関わる内容に少し触れていきます。
「体積流量」はフィラメントの設定項目での「最大体積速度」として設定でき、1秒間当たりのノズルからの吐出量(mm3)として設定されています。

汎用PLAでのデフォルト値は15mm3/sとなっています。

流動性の高いフィラメントであれば、より高い値に変更して印刷速度も上げられます。フィラメントの温度を上げる流動性が上がるので、印刷速度も上げられます。

ホットエンドでの加熱能力やノズル径でもその制限値を変えることが出来ると思います。一言でこの「最大体積速度」を変えるといっても、色んな要素が絡むだけに無暗に変えて、ノズル詰まりのトラブルにもなりかねません。

 15mm3/s設定というのは、この機種での安全値と思うのですが、増やしてテストするのは勇気がいります。なので、ここではこの値は触らないようにしておきます。
 いくら「体積流量」を増やせたとしても、「冷却」が付いてこなくては綺麗な造形が得られません。
なので、次に「冷却」について見ていきます。

 

冷却について

 「フィラメントの設定」の中の「冷却」の項に、

 ・ ファン最低回転速度(%)と積層時間(mm)
 ・ ファン最大回転速度(%)と積層時間(mm)
 ・ 最小造形速度(mm/s)

というのがあります。

フィラメント設定(冷却)

 これらは次の層が重なるまでの最小時間を設定したり、吐出された層が崩れないように速度を落としたりするパラメータと思われます。

これらの値は、フィラメントの特性に合わせて全く異なっています。
 実は、この値が印刷時間に大きく影響しています。

 試しにちょっと無謀ですが、「最小造形速度」を100mm/sに設定して印刷してみました。
 OrcaSlicerでも印刷時間は28分4秒になりました。果たして結果は?

 

 

 実質印刷時間は、30分17秒と大幅短縮となりましたが、煙突部分が崩れています。
これは短時間で積み重なって固まり切れなかった結果と思われます。このテストは、装置に大きな負担を掛けることはないと思いますので、いくつか試して許容値を見つければいいのではないでしょうか。

 試しに、「最小造形速度」を50mm/sに設定して、冷却ファン100%設定で印刷してみました。

 実質印刷時間は、35分10秒(スライサー時間は、32分48秒)となりましたが、十分綺麗ではないでしょうか。

更に、「積層時間」を小さくすると、もっと時間短縮が計れます。(仕上がりは不明)

 フィラメントメーカー室温印刷設定温度なども影響する要素と思いますので、期待する最適最速値は、ご自身で条件を変えて繰り返し印刷して見つけて頂くしかありません。

 Curaでは、「最大体積速度」に相当する設定項目は見つけられなかったのですが、「冷却」の中に「最低速度」「最小レイヤー時間」がありますので、うまく組み合わせると同じように印刷時間短縮を計れるのではないでしょうか。

 ベンチマークサンプルでも20分を余裕で切れるようになるでしょう。

まとめ

 OrcaSlicerでも印刷時間短縮を出来ましたし、更に「冷却」の設定最適値を見つけることでより短縮できると思われます。ですが、やはりCuraの方が印刷時間が短いという印象です。

 印刷時間短縮は、あくまで品質維持の前提で求めるものなので、明確な答えは出せませんが、スライサー設定する際の参考になれば幸いです。

 私自身ももう少しこの「冷却」について追加テストを続けてみようと思っています。

良い結果が出ましたら続報として報告致します。

 OrcaSlicerについては、まだ最近公開されたばかりなので、まだまだ改良されていくと思います。特に、「内側ソリッド インフィル」の問題については、効果的な改善を望むところですね。