3DプリンタープリンターEnder-3の評価テストやアップグレード、改造を進めていますが、今回はZ軸のデュアル化を行いましたので、紹介します。
Z軸デュアル化する目的について
Ender-3と同様の構造を持つ格安プリンターでは、X軸アセンブリを左右2本のZ軸フレームで支持し、上下する機構には一組のステッピングモータと送りネジで制御しています。この駆動機構を左側Z軸フレームのみに配置しています。よって、X軸アセンブリの右側では、その動作に追従する形で上下する構造となります。
X軸アセンブリには、ホットエンド部や冷却ファンなどがあるヘッド部が左右に動くことにより、X軸アセンブリの左右のバランスが変化し、X軸右側が不安定な状態になる可能性があり、また、Z軸送りネジにも歪んだ力が加わり、モーターへの過負荷も懸念されます。
更には、ボーデン式エクストルーダからダイレクト式エクストルーダに変更しようとすると、ヘッド部の重量がさらに増して、上記の懸念がより大きくなってきます。
このような重量バランスの影響を軽減し、X軸アセンブリの水平度を保つためには、右側においても同期する駆動機構が必要となります。
Z軸デュアル化の方式について
今回Z軸デュアル化するに当たり、まず悩んだのがデュアル化方式です。
大きく分けて、
1.右側Z軸フレームにステッピングモーターと送りネジを追加する方法
更に駆動方式として
1A:現在あるZ軸モータードライバーをそのまま使い2分割して、
2個のモーターを制御する。
1B:Z軸を2軸制御できるマザーボードに交換して、独立制御する。
2.ステッピングモーターは追加せず、送りネジ、タイミングベルト、プーリを追加
して元の送りネジ動作と同期動作をさせる方式
が、あると思います。この中で、1Bの新規マザーボードも交換する方式は、私にはハードルも高く、選択肢は1Aか2となります。
1Aは見た目スッキリとした配置で、理想的ではあるのですが、Z軸モータへのケーブルを2分割して、振り分けるようにして接続するので、制御時は2つのモーターは完全に同一動作をすることになります。
ただ、電源OFFや無励磁(Disabled)状態では、手動でそれぞれ回すことができるので、想像ですが、造形前に高さ調整(水平確認)をやらないといけないのではと思います。この点が気になって、選択し辛いです。
一方2のベルト連結による同期駆動では、モーターの励磁・無励磁に関わらず、メカ的に同期をとるので水平確認を頻繁にやる必要はないと思います。
ただ、見栄えとして、ベルト連結機構がトップフレームに追加となるので、スッキリ感は劣ります。また、YouTube等での調整動画を見ると、とにかく最初の組付け調整が難しく慎重にやる必要があるとのことで、不安を感じます。
結局、悩んだ末に2のベルト連結式にでデュアル化することにしました。
購入品
アップグレードキットは次を購入しました。購入時価格は2,727円(送料込み)
発注から到着まで19日間なので、ほぼ予定通りの入荷です。
取扱説明書もなく部品のみの内容でしたが、品質的には全く問題なくジャストフィットで、満足いく商品でした。
組付け開始
まず、改造前の状態は、
今回の改造を行うには、次のような調整冶具を事前に印刷する必要があります。
もちろん代用品も可能ですが、今後も繰り返し調整用に便利だと思うので、用意しておくと便利です。
私はこちらのサイトからデータを頂きました。
この冶具をX軸フレームとベースフレームの間に入れて、X軸アセンブリの平行確認を行います。
赤〇で示した箇所で、右側に約1mmの浮きがありました。この状態をまず修正する必要があります。これを修正するためには、X軸アセンブリ全体をZ軸フレームから抜き取る必要がありました。やむおえずトップのフレームも取り外して抜き取り、X軸フレームの取付角度を調整して再取り付けしましたが、微妙に先ほどの浮きが残りましたけどこのまま先に進みました。(この辺、もう少し調整し易いといいのに・・・。)
X軸アセンブリがほぼ水平になったところで、いよいよ改造の本番です。
改造手順については、YouTubeで「Dual Z Axis Ender-3」などで検索すると有益な情報が得られると思います。
詳細の交換手順については、この記事では割愛しますが、手こずったところのみ詳細記載します。
1.X軸アセンブリの右側プーリーアセンブリに新たにブラケット追加
標準のままでは、電源ユニットが邪魔になるので取り外して別置きします。
(私の場合は既に取り外して単独置きしてます)
まず、既存のプーリアセンブリを取り外します。
新たな取付ネジに交換して新しいブラケットを取り付けていきます。先に偏心ナットのローラー(内側の一個)側を組み上げてから、所定の箇所で外側2個のローラーを取り付けていくのが一番やり易いと思います。
赤〇部のセットが1ローラー分の組付け部品になります。
3つのローラーが取りついたら、偏心ナットを調整して各ローラーの当たり具合を調整します。
2.各パーツの組付け
- 左側の既存の送りネジを取り外して、新たな少し長い送りネジに交換します。
- 右側にも新たな送りネジを通しておきます。
この時、送りネジには潤滑用のグリスを摺動範囲全体に塗っておきます。
(塗り過ぎた分は後で拭き取ります) - 送りネジの上部の振れを支えるベアリングのブロックをトップのフレームに取り付けるのですが、ネジ固定は緩めにしておきます。
- 送りネジ先端に、新たなプーリーを取り付けますが、固定ネジは空回りしない程度に緩めに締めておきます。
- ベルトテンショナーを取付け、ベルトを入れて、ベルト跳びしない程度にテンションを掛けておきます。
3.最終調整(ここからが、一番気を遣うところです)
最終仕上りの目標は、
- 平行確認冶具に当てたところで、左右ともぴったりと当たっていること。
- X軸アセンブリを出来るだけ上まで、送りネジを手回ししても負荷に変化がないこと。
- ベルトテンションが、しっかり張れていること。
- 各固定ネジがしっかり固定されていること。
これらを目指して、各固定ネジを緩めたり締めたりしながら調整していきます。
ベルトで同期を取るこの機構では、この調整が一番重要で、最終調整できた時には非常にスムーズなX軸アセンブリの上下動作が実現でき、当分の間は再調整の必要がないのでないかと思います。
取付完了後の感想など
無事に組付けが完了してほっとしています。取付後、いくつか小さな造形をしましたが全く問題なく安定した造形をしてくれました。(幅広造形はまだ無評価)
実は、今回の改造前に「アンチバックラッシュスプリングの追加」というものも予定していたのですが、購入してやっと到着したものが購入ミスで合わない物だったので買い直し中です。Z軸動作については、オートレベリング機構が無ければ、造形中にマイナス方向(下方向)への動作がないので、特にこの「アンチバックラッシュスプリング」も必要ないかなと思っていましたけど、微妙な上下動作を伴うオートレベリング機能下では、必需品と思っています。
次に取り付けるときは、また送りネジを分解して、上記の調整が必要となり気が重いのですが・・、やむを得ないです。
次の改造予定は、Z軸フレームの傾き調整機能付き補強ステーの追加を計画しています。
【2022/02/05追記】ベルトテンション調整サポート部品を製作
X軸アセンブリを水平にした上で、ベルトのテンションを調整する場合、テンションプーリーを付けたブラケットがフラフラと不安定で、固定し辛いという感じがありました。
これを解消するために、次のようなサポート部品を製作しました。
これにより、ベルトのテンションが非常に張り易くなりました。
X軸アセンブリの水平確認冶具で調整しながらテンションを張れるので、上記で記載していたような調整の煩わしさから少し解放されました。
【2023/05/16追記】デュアルZ軸化改造を取りやめています
当記事での報告が遅くなりましたが、昨年10月に当改造「デュアルZ軸化改造」を取りやめています。きっかけは、印刷物のZ軸方向に8ミリピッチの送りねじピッチむらが発生したためで、次の記事にてその後の状況を記載しています。