GGの挑戦

3Dプリンターライフを楽しんでいます

【Ender-3】ヒートベッドをPEIシートに交換

 3DプリンターEnder-3を使って、評価テストやアップグレード、独自改造を行っています。
3Dプリンターのヒートベッド材質については、現在強化ガラスベッドを常時使用していますが、よく定着しすぎる弊害もあり、最近評判のPEI(ポリエーテルイミド)シートが気になり購入しました。
 私にとってはガラスベッド以外のベッドなので、どのように運用して行くのが良いのか試用してみました。

購入品

 下記のPEIシートとマグネットシートがセットになった商品を購入。

ja.aliexpress.com


Ender-3用の235×235mmサイズで、価格は2,668円(送料込み)、発注~到着まで19日間でした。

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PEIシート&マグネットシート

PEIシートの使い方

 今回購入したPEIシートではマグネットシートが付いているので、一般的な使い方としては先にマグネットシートをベッドのベース面に貼り付けて、その上にPEIシートを吸着させて使う、という使い方だと思います。
 ちょっと待てよ、マグネットシートを貼ってしまったら、ガラスベッドはもう使えなくなるの?
 今頃そんなことに気づくとは・・。さてどう使おうか?
とりあえず、重量を計ってみました。何れもEnder-3用の235×235mmサイズです。

  • PEIシート    :200g
  • マグネットシート  :295g
  • 使用中のガラスベッド:520g

 重量的には、ガラスベッド≒(PEIシート+マグネットシート)
となり、置き換える場合はほとんど同じということになります。
 私の使い方としては、ガラスベッドも使いたい。マグネットシートの上にガラスベッドを置くのは、熱伝導の効率から採用は難しいと思う。

ということで、結局次のような使い方を試みました。

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ガラスベッドとPEIシートの併用

 マグネットシートは使わず、PEIシートの場合はクリップで止めることで使えるだろうと・・。
重量も300g以上軽くなるので、これで成功すれば、十分に効果的な運用ができるはず。
印刷物を剥がす時にはいちいちクリップを外す手間は増えますが、それ程面倒でもないのでこの方法で試してみました。
ガラスベッドとの交換も容易です。

ベッド温度上昇の比較

 ガラスベッドから、PEIシートに乗せ換えることで、軽くなるばかりか、ベッド温度の上昇速度や温度ムラについても改善するのかなと期待します。
ベッド温度上昇速度のみ実測してみました。
ベッド表示温度が室温(18℃)から設定温度(80℃)に達するまでの時間を計りました。 結果、

  • ガラスベッド:5分16秒
  • PEIシート:3分39秒

 ガラスベッドの場合は、更に表面温度が安定するまでには更に数分掛かると思われますので、圧倒的にPEIシートのみの方が速いです。
マグネットシートの上にPEIシートを置く場合はもう少し時間が掛かるとは思います。

PEIシートのみの効果(ガラスベッドに比べて)

 上記のウォームアップ時間の短縮以外にも、印刷後の冷却待ちも短くなりますし、印刷後の取り外しも、PEIシートを取り外して軽く曲げるだけでべりっと剥がれます。
 ガラスベッドでガッチリ定着すると、冷めても外れず何かしら器具を使って底面を浮かそうと苦労することがよくあります。PEIシートではその必要はなさそうです。
 ただ、逆に何か器具を使うと表面のPEI膜を傷付けてしまいそうで、優しく扱わないといけないのかなと思います。

PEIシートのみでは問題あり!

 PEIシートのみでいくつか印刷して、非常に定着も良く感激していたのですが、150mm程の長尺物を印刷したところ、定着はいいのですが、印刷物の反りが強く、PEIシートもベッドのベース面から浮き上がり印刷物としては剥がれることもなく、底面に強い反りが発生していました。

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印刷後の状態(PEIシートのみ)

 印刷物は150mm程度のパーツを横向き2個同時に印刷した結果ですが、PEIシートのクリップで止めていない赤い部分が浮き上がった状態です。

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2個同時印刷し底面同士を合わせあた状態

 2個のパーツを底面同士で合わせると、強い反り(黄色矢印部)がありました。
結局、PEIシートのみでは、使えないことが分かり、マグネットシートを貼る決断をしました。

マグネットシート&PEIシートで安定印刷!

 やはりPEIシートはマグネットシートを使うべき、ということを知り強化ガラスベッドとの併用をあきらめることにしました。マグネットシートの貼り付け方法については、気泡を入れないようにベッドベース面に貼り付けることに注意すれば、難しくありません。
マグネットシート&PEIシートの状態で、ベッド温度の上昇速度を測定してみました。

ベッド表示温度が室温(17℃)から設定温度(80℃)に達するまでの時間

  • マグネットシート&PEIシート:5分03秒

ガラスベッドと大差ないようです。

 問題は反りの改善です。早速印刷してみました。

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マグネットシート&PEIシートでの印刷状態

印刷した2個のパーツを底面同士で合わせてみました。

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2個同時印刷し底面同士を合わせあた状態(変更後)

 反りはほとんどなく、綺麗な仕上がりになっています。

 この状態でPETGを使って10個程度の印刷を繰り返していますが、全く問題なく安定印刷できています

 ただ、ベッドとの密着がかなり強くて、ブリムにすると耳の切れ端がガチガチに密着して取り除くのに苦労します。硬いものでガリガリするのも傷付けそうだし・・、とりあえず今はアクリル板を使って何とか傷付けずに取れています。

所感

 PEIシートデビューとなりましたが、使い心地はガラスベッドと比べ、作業性は非常に良いと思います。何といっても印刷後の取り外しが楽です。密着性も今のところ失敗ゼロ(PETGで10個程度印刷で)と安心して印刷できています。
 PEIシートへの変更に加え、これまでの改造がやっと実を結んできたのかなと思っています。
 これまでは第一層目がうまく定着するかを見届けるまではその場を離れることもできませんでしたが、今では印刷ファイルを「ポン」と選んで、後は安心してその場を離れられます。

今後の予定

 まだできていない改造ということでは、ベルトテンショナーやリニアレール化、フィラメント検知センサーなどがありますが、取り合えず満足のいく作業性や仕上りが得られれば良いかと思って、それらは不満を感じたときにやっていこうと思います。
 よって、本体のハード的な改造は一旦ここまでかな・・・。
 今製作中はエンクロージャ(保温BOX)です。今のプリンターを駆使してどんなものができるか・・、完成出来たらまた紹介します。

 

【2022/05/26追記】その後の状況

 3ヶ月後の現在もこのPEIシートを愛用し続けています。フィラメント材料は、ABSとPETGのみ使用しています。ほぼ半々で計130個程の印刷を行いました。ABSでは、PEIシートへの貼り付き及び印刷後の取り外しは非常に良好でPEIシートの効果は抜群です。
しかし、PETGでは貼り付きが良すぎて、印刷後の取り外しが、大変です。他のサイトの評価でもよく言われていることで、PETGやTPUでは貼り付き過ぎに注意が必要です。特にブリムやスカートなど1層目だけが残る場合、印刷後に取り除くことが大変です。私のように繰り返しPETGで印刷した結果、ついにはPEI表面が剥がれてしまう事態に。

PEIシート面に剥離発生

 他社メーカーの注意書きには、PETGやPCTG、TPUを使う場合にはヘアースプレーやpva接着剤を使用することを推奨しています。今までは1層目の定着を良くするために使っていたものが、PEIシートの場合は剥がしやすくするために使うと言うことです。
 現在はヘアースプレー(ケープ)を事前にシート面にスプレーして使っていますが、印刷後非常に良好な取り外しが出来ています。
 また、印刷を繰り返す場合、どうしてもシート面の中央部ばかりで印刷してしまいがちです。スライサーソフト(Cura等)で出来るだけ印刷場所を変えることで長く使えるのではないかと思います。
 今ではPEIシートから離れられず、新しいシートを発注しました。

 

【2023/05/16追記】その後の状況

 昨年6月からは、ENERGTIC 社製のPEIシートに替えて運用していましたが、先週PEIシート面に大きな浮きやひび割れがあるのに気付きそろそろ寿命かなと思っています。

フィラメント(1kg)を10本以上は印刷していました。

印刷底面部にわずかな歪みがあって気づいた次第です。

浮き・ひび割れ発生

 写真ではさっぱり分かり辛いですが、肉眼ではよく見え、浮きは赤○部に近いぐらいの大きさになってました。とりあえず印刷はできるので、通常通り使っていますが、交換用の同じPEIシートを再発注しました。価格が1年前の2割UPぐらいになっているので、ちょっとショックです。