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【Neptune 4】1層目の印刷をより綺麗に

 最近は3DプリンターELEGOO Neptune4に関わる記事や、作品の紹介など気まぐれに投稿しています。

 3Dプリンターで1層目の印刷というと、通常思い浮かぶのは「ベッド面への定着を良くするために」だと思います。これについてはネット情報も溢れており、今更ここで取り上げるつもりはありません。

 私の場合は、PEIシートを使用して、ベッド面をクリーンにして、オートレベリング、Z-Offset調整が適正に行われていれば、大抵の場合安定した定着が出来ています。

 今回取り上げたいことは、定着の問題ではなく、1層目の印刷状態が安定した層を形成しているか?ってことです。

 1層目が定着してやれやれと思うだけでなく、綺麗な印刷面となっているか観察してみてください。特に左右で違いはないでしょうか? 品質上、結構重要な内容と思っていますので、是非最後までお付き合いください。

きっかけとなった不具合現象

まず、Neptune4を使われている方で、次のような不具合にあったことはありませんか?一例です。

広い面の印刷で、2層目印刷途中で止めたところです。

 第1層目の印刷ですが、左側の方に酷いムラがあります。または、印刷ののりに偏りがあったり、剥がれ掛けたりと、左右で品質が変わるという現象です。もちろん、レベリング調整もやってますし、思い当たる原因がわからなかったんです。

 綺麗に印刷できるときもあれば、このようになってしまうこともあると、神出鬼没でつかみどころがありません

要因の推察

 神出鬼没なのでリンギングなどの振動・共振に関わるものとも思えず、症状は常に左右で違いがあることに注目しました。左右での違いとなると、Z軸の左右のバランスということになります。X軸ガントリーを支えて駆動制御するのは、左右2つのZ軸ステッピングモーターです。駆動時にはガッチリと励磁されて2個同時に同じ動きをするので、駆動中にバランスがずれることは、余程の過負荷が掛からない限りないと考えられます。それでは待機中や電源OFF時などは無励磁となり、手回しでZ軸をそれぞれ回すことが出来ます。

但し、必ず左右2個のZ軸動作が同期する必要がありますので、タイミングベルトで2つのZ軸が連結されています。このベルトがギンギンに張られているとモーター駆動と干渉して過負荷が掛かりますので、緩いテンションとなっています。

ただこのテンションが緩すぎると、左右でZ軸の高さが変わってしまうことになり、絶妙な状態でのセッティングになっていると思います。

 今回問題視したのは、実はこのテンションで、緩すぎではないかと感じており、ここに注目しました。

現状のZ軸連結ベルトの張り具合

 私の装置でのベルトの張り具合は、ゆるゆるです。購入当初からこんなに緩くていいのかなあとずっと疑問には感じていました。

このベルトについては、テンション調整できる機構はありません。

軽く指で押してみます。張というより、弛(たる)んでいるという状態です。

この弛み具合がどれだけ影響するのかということを追求することにしました。

ベルト弛(たる)みの数値化の試み

 ベルトに弛みがあると、遊びが出て左右Z軸での高さ変化が出るはずです。ただ、これを計測器も使わずに数値化することは至難の業です。思案の末、思い付いたのが下の写真の様に左右Z軸のねじの先端に指針を付けて、角度ずれを測ることで数値化することにしました。角度は円盤に2°刻みの目盛りを付けており、弛み分の角度を読みます

 左右のZ軸は無励磁状態で、モーター上のカップリングを手回しして、それぞれの角度を見ます。

 円盤を付けると、なかなか格好いいんですよ。2週間程このまま楽しんでました。

それはさて置き、通常運転でもこのまま使用していましたが、角度差は1~2目盛りぐらいの差がよく出ていました。

ただ運転中なので、頻繁に動くため詳細な差はなかなか読めません。

 そして目的の無励磁状態の角度のギャップは、1~1.5目盛り(2~3°)程度と判断しました。

Z軸ねじのピッチは、8mm/1回転なので、2~3°は高さの0.04~0.06mmに相当します。

左右のZ軸の間隔が300mmで、ヘッド部が左右に動く範囲を200mmとすると、約2/3の変化となり、実質高さの差は0.04mm以下となります。つまり、印刷する度にZ軸の左右の高さがこの程度ズレた状態で印刷される可能性があるということです。

ベルト弛みのギャップが印刷に影響するのか?

 ベルト緩みの影響で、0.04mm以下の左右高さの差が生じる可能性があると判断していましたが、果たしてこの程度の影響で印刷に変化が現れるのでしょうか?

 これは確かめるしかない。とは言っても、どうやって確かめるか?・・・

 結局思い付いた方法は、ベルト緩みを無くすことで症状が無くなるかを確かめることにしました。

ベルト弛みを無くす対策

 一般のタイミングベルトを使った装置では、弛み取りやテンション調整のために別途ローラーをベルトに押し当てることがあります。

このローラーをアイドラーといいます。今回の対策にもアイドラーを使って弛みを取る方法にしました。強いテンションを掛けて過負荷にすることはできないので、弱いバネを使ってローラーをベルトに軽く押し当てます。

製作したアイドラーは次のもので、バネは線径0.6mmのトーションバネ(キックバネ)です。

取付状態は次のようになります。

比較テスト

 アイドラーの有る無しで比較テストすることにしました。テストモデルは、幅200mm、縦50mm、高さ0.2mmとして1層のみの横幅の広いシートにしました。

それぞれオートレベリング、Z-Offset調整後に実施します。材料はPLA黒、印刷速度120mm/sで各5回、Z軸モータ上のカップリングを手回しでグリグリいじった後に印刷しました。

テスト結果

 1. 通常状態(アイドラーなし)

全体的には綺麗に印刷できているのですが、赤○印のところに印刷乱れが出ていますので拡大します。

 5回中、2回の乱れが出ています。これも、2層目が乗ってくるとほとんど見えなくなるレベルです。 

 

② アイドラーを取り付けた状態

いずれも乱れらしきものもなく、綺麗な仕上がりです。

考察

 明確な違いではなかったので、アイドラーの効果を過大評価することはできないのですが、感触としてアイドラーを付けると1層目の乗りの安定感が増したと思います。回数は少ないですが、印刷面での左右の違いは出なくなりました。

まだまだ、回数を重ねて不具合が出ないことを確認すべきなのですが、今後もアイドラー取付状態で継続観察していきます。

まとめ 

 今回は、1層目の印刷安定性向上を目的として、Z軸連結ベルトへのアイドラーの取り付けを提案しました。

 通常印刷で不具合に遭遇する機会も少ないと思いますが、もし同様の不具合でお困りの方のご参考になればと思います。

多分、市販品もなく、自作できる方に限られる点は申し訳ございません。

余談(1層目の定着をより良くするために) 

 今回の記事とは直接関係ありませんが、PEIシートを使っていて、レベリング調整も適正、シート面を洗剤やアルコールで清浄にしても部分的なベッド剥がれが起きてしまう、こんな経験ございませんか?

 そこで、一度試してほしいのが、これです。

 台所でお馴染みの油汚れ洗剤です。これをシート面にシュシュっとかけて、スポンジたわしでやさしく丁寧に洗うだけです。

しつこい油脂の影響で剥がれる場合に効果絶大です。不用意に手指が触れてしまった時など試してみてください。アルコールはよく紹介されいますが、油膜を広げるだけで取れるとは言い難いです。