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【Ender-3】サポートなしの印刷を目指して

 3DプリンターEnder-3を使った評価テストやアップグレード、独自改造、製作品の紹介などの記事を載せています。

 唐突ですが、FDM式3Dプリンターを使っている中で印刷物のサポートを極力減らしたい、また、サポートを付けることができないと悩んだことありますよねぇ。
今回、ある作品を設計する中で、どうしてもサポートが付けられない幅広いブリッジ構造の造形品があり、どこまでサポートなしで印刷できるのかという感覚を得るためにテストしてみました。

ブリッジとオーバーハング

 前置きとなりますが、造形品を印刷する前によく悩むのが、サポートの付け方だと思います。サポートを極力減らしたいというのは皆さんも同じですよね。成形後のサポート外しや表面の荒れ補修、フィラメントの無駄、印刷時間の無駄など、極力避けたいところです。
 ネット上で公開されているデータ(STL形式など)を印刷する場合は、スライサーソフト(Curaなど)の中でベッド面への置き方やサポートの設定などで調整しているかと思います。
 ご自身でモデリングする場合は、印刷パーツのどの面をベッド面に置くかということを意識して、設計していると思います。
 そんな中で、サポートを減らすためにブリッジ構造の幅の設定やオーバーハング角度設定を気にしながら形状の設計をしていると思います。

ブリッジ・オーバーハングの概要

 ネット上では、どこまでブリッジの幅をとれるか、またはどこまでオーバーハング角度をとれるか、といった記事を散見します。自分のプリンターでどこまで可能なのかはやってみなければわかりませんが、これまでの感覚的には、ブリッジの幅は30mm程度、オーバーハング角度は50~60°かなと漠然と感じていました。
 そして今回、ブリッジの幅を更に広げたい事案が生じまして、効果的な方法を探していたのですが、なかなか有益な情報が見つかりません。
 スライサーソフト(Curaなど)での詳細設定ではなく、あくまでもモデリング時に考慮したい感覚的なものになります。

 実際の設計においてはブリッジ構造、オーバーハング構造と分けて考慮するのではなくて、その複合的な構造で、果たしてこれで印刷できるのかと悩む場面も多いのではと思います。そんな観点でテストしてみたいと思います。

単純なブリッジ構造のテスト

 まず、単純なブリッジ構造についてテストしてみました。
(テスト時の詳細条件については最後に記載しておきます。)

印刷したテスト品です。

ブリッジテストピース

単純なブリッジ構造の印刷結果

ブリッジテスト結果

 左側が表面(上層面)で、右側が裏面になります。

 40mm幅でも90mm幅でも大きな違いはなく、上層面は少し荒れは有りますが印刷できました。ただ、裏面を見るといづれも荒れており、1~2層目当たりに剥がれがあります。幅が広がる程荒れの状態も大きくなる感じです。
 当然といえば当然の結果ですが、ある程度印刷できたことに驚いています。

複合構造でサポートなしを目指す

 裏面もある程度きれいに、ブリッジ幅を伸ばせないか、これが今回の目標です。
 特に第1層目のライン同士の融着具合が重要で、スライサーソフトで改善する方法もあると思いますが、そこは他の方のレビューに任せたいと思います。ここではモデリング上での対策を考えてみます。
 そこで単純に思いついたのが、ブリッジ構造に少し傾きを設ける、といった構造です。
ただ長いスパンを渡す上では最初のラインを渡す時に既に不安定になるので、要は安定したラインに着けていくということです。
 これらを加味して、次のようなテストピースを作てみました。

テスト品の形状

 次のような形状を7種類作りました。

テスト品全体図

テスト品のスケッチ・断面図

ブリッジ幅が30~100mmに連続で広がり、0°から30°まで5°毎に傾けた7種類のサンプルとなります。尚、ブリッジ部は、1mmの厚みです。
 これらのサンプルをサポートなしで印刷したらどうなるか、というテストです。
 フィラメントはABSで、テスト条件は最後に詳細を示します。

テスト結果

テスト品の全体

見難いので少し拡大してみます。

0° 5°表面

0° 5°裏面

10° 15°表面

10° 15°裏面

20° 25°表面

20° 25°裏面

30°表裏面

 とりあえず全て無事印刷できました。

 尚、フィラメントをPETGとして同様の印刷を行いましたが、ほぼ同様の状態でしたので、考察としてはABSで進めていきます。

PETGでの印刷

考察と評価

 表面(上層面)の状態は、0°(平面)のものはデコボコでうねりもあり醜いですが、他は荒れ・ムラの大小があるものの使用目的によっては使える可能性もあります。
 特に30°となると、ほとんどムラもなくきれいになっています。
 ただ、角度によってきれいになるといったものでもなく、角度によってはきれいだったり、デコボコだったりと、差があるような気がします。何か干渉ムラみたいな現象が発生するんでしょうかねぇ?
 ところが、裏面となると、角度に応じて荒れ(剥離やデコボコ)具合いが変化しているようです。0°では全域、5°ではブリッジ幅40mm辺りからラインの剥離が生じており、実用に向かない状態です。
 10°~25°では、デコボコはあるものの角度が大きくなるにつれ軽減され、またブリッジ幅とも関連していそうです。30°となると、ほとんどムラもなく実用十分な状態です。
 この実用レベルのボーダーラインを角度とブリッジ幅との関係図で無理やり表現してみました。 単一テストの感覚的な個人の判断ですので、あくまでも参考です。

角度とブリッジの関係

 

今回の結果から、目安としてブリッジ幅によってどれぐらいの角度を設定すればよいのか設計の目安になると思います。

 後、幅広のブリッジ構造を形成するためには、しっかりした積層ベースにラインを順次乗せていく手順が重要と思いますので、いきなり幅広いブリッジに最初のラインを乗せるといった動作となるようでは失敗すると思います。

 これらの感覚を今後の作品作りに反映していけるのではないかと自負しています。
そして、いま進めている作品作りに直接関係してくるので、出来上がりましたらまた紹介します。

以上、少しでも参考になりましたら幸いです。


今回のテスト条件

・装置:Creality Ender-3
・フィラメント:RepRapper ABS 黄色, PETG クリア
・エンクロージャー:あり(自作) 室温10℃前後、エンクロージャー内上部約30℃
・設定温度:ABS ノズル245℃,ベッド100℃
・印刷速度:60mm/s
・冷却ファン:50%
・積層ピッチ:0.2mm(標準)
・ライン幅:0.4mm(標準)
・壁厚(上下含む):2mm
・インフィル:テスト品では関係なし
・サポート:なし
・ベッドへの密着性:ブリム4mm