GGの挑戦

3Dプリンターライフを楽しんでいます

【Fusion360】はすば歯車の作成方法

 3DプリンターEnder-3を使った評価テストやアップグレード、独自改造等の記事を主に記載しています。
 最近はEnder-3を使っての物作りに没頭しており、前々回記事より「しゃぼん玉発生器」に取り組んでいます。
そんな中、平歯車(スパーギヤ)の騒音低減対策として、はすば歯車(ヘリカルギヤ)に切り替える対処を行ったのですが、このはすば歯車の作図について記載したいと思います。

 モデリングにはFusion360を使っています。平歯車の作図には標準でアドインからSpurGearを使って容易に作成することが出来ます。
ただ、はすば歯車は、標準でアドインが用意されていません
よって、新たなアドインをインストールする必要があります。
 ここでは、アドイン「GF Gear Generator」のインストールからはすば歯車の作成過程などを説明したいと思います。
 非常に簡単にはすば歯車を作ることができ、うまく機能することが分かりましたので紹介することにしました。

アドインのインストール

 Fusion360にて、「ユーティリティ」→「アドイン」の「Fusion360 App Store」を選択します。

アドインのアプリストアを選択

 AutoDeskのApp Storeのサイトが開きます。

検索欄に「Gear」など入れて検索すると、「GF Gear Generator」があります。

色々な種類の歯車が簡単に作ることができるアドインのようです。フリーで提供されています。

GF Gear Generatorを選択

これを選択し、OSを選択して「Download」を押すとサインインを要求され、入力後ダウンロードすることが出来ます。
ダウンロードしたファイル(例:GFGearGenerator_win64.msi)をダブルクリック等で起動すると、アドイン・インストーラが起動してインストールすることが出来ます。
Fusion360を一旦終了して、再起動すると「ユーティリティ」で次の表示が追加されています。

GF Gear Generator追加画面

作成概要と特徴

 はすば歯車作成は、上記の「GF Gear Generator」を使って非常に簡単に作成できます。
 生成されるはすば歯車のタイプとしては、軸方向に対して直角にねじるタイプとなっているようです。なので切削加工で作るには不向きな形状と思います。私は3Dプリンター(Ender-3)で作るので問題ありませんが・・。

はすば歯車の形状モデル

 ここで説明するはすば歯車は次の3種類の形状を作るものとして、それぞれ適正に噛み合うことを確認していきます。

3種類の形状パターン

1段目のはすば歯車の形状を設定

 「GF Gear Generator」にて設定に必要な内容です。
  ・モジュール ---歯の大きさを表すものでまず、最初に設定する値です。
  ・歯数    ---必ず整数値が必要。
  ・歯車の厚み(高さ)---はすば歯車の場合、重要な設定値です。
  ・らせん角度 ---歯の傾き角度を表すもので、形状の異なる歯車も同一角度にする 

          ことで合わせることが出来ます。

  ・圧力角   ---一般的な20°を設定します。

  ・ピッチ円直径 ---設定項目にはありません。
           (歯数×モジュール)の値で決まります。
           歯車のかみ合わせの規準円の直径で、加減速や配置上重要。

 例としては、次のように設定しています。
  ・モジュール :1
  ・歯数    :16
  ・歯車の厚み :6 mm

  ・圧力角   :20°
  ・らせん角度 :28.0°(ここでは、歯の1ピッチ分ぐらいねじるとして設定)

1段目のはすば歯車を作成

 Fusion360の「ユーティリティ」→「GF Gear Generator」→「Simple/Double Helical Gear」を選択実行します。

ヘリカルギヤ(はすば歯車)の選択

設定値を入力していきます。

ヘリカルギヤ設定画面

数値を入力し、「OK」を押します。

1段目はすば歯車完成

あっさり出来てしまいました。

2・3段目のはすば歯車の作成

 はすば歯車の作成手順は、上記で示した手順と同じです。
ただし、次の注意が必要です。
 中間の2段目の歯車は、ねじり角度を逆方向にする必要があります。
「らせん角度」設定で-符号を付けることが出来ません。
「歯車の厚み」設定値で-符号を付けることで逆向きの歯車を作成できます。

設定値は次のようになります。

設定値一覧表

後は軸を通す穴を開けたり、配置変更すれば当初のモデル形状となります。

らせん角度とねじり角度の関係

 操作とは関係の無い余談話です。
「GF Gear Generator」の実行したスクリプトの中にスイープ処理があり、その中の「ねじり角度」が自動的に計算されています。その結果を上記の設定値一覧表で示しています。

 ではこのねじり角度がどのようにして計算されているのか気になり、調べてみました。
下の図で説明していきます。(分かり辛かったら、ごめんなさい。)

モデルはピッチ円直径:16mm、厚み:16mmの図になっています。

らせん角度とねじり角度の関係図

らせん角度は歯の傾き角度と考え、図ではα:28.0°としています。
この角度でピッチ円円周上に貼り付いたものと考えると、ねじり角度θは次の一般式で表されます。

 θ×tan(α)×360°//π

ここで、
 h:歯車の厚み(mm)
 d:ピッチ円直径(mm)

 恐らくこの式にて、自動計算しているものと思われます。

実際に歯車を印刷

 ホルダーも追加して、実際に3Dプリンター(Ender-3)で作成したのが以下のものです。

サンプルの実物

うまくかみ合っていると思います。

いくつか注意点

 はすば歯車については、スラスト方向(軸方向)への荷重が発生することから、回転すると横へ逃げようとします。この動作を押えるための軸受けが必要となります。

 

スラスト方向説明図

 実物を3Dプリンターで出力するわけですが、バックラッシュを大きく取っているにも関わらず、設計図通りに印刷しても外形が大き目になってスムーズな回転が出来なくなることがあります
 私の場合、安易な方法ですが、中間歯車の形状をスライサーソフト(Cura)にて98%に縮小して印刷しました。恥ずかしい方法ですが、3Dプリンターは自由度があっていいですよねぇ。

所感

 「GF Gear Generator」を初めて使用しましたが、とにかく簡単にはすば歯車が出来てしまうので驚きました。ただ、歯の根元にフィレットが入りません。必要な時は円形状パターン作成の前にフィレット追加処理などを加える方がいいかもしれません。

 また、90°傘歯車などでも使ってみたいと思います。

【2022/5/29追記】

 90°傘歯車も非常に簡単に作成できます。設計途中の一例ですが、こんな感じです。

設計途中の傘歯車例