約2か月ぶりの投稿です。最近は、印刷頻度も減り、目新しい成果もなく投稿も控えていました。
そんな中でも、一つテーマを設けて準備を進め、やっと実践することが出来ました。
そのテーマが「曲げ試験」です。
「曲げ試験」とは、プラスチック材料の機械的強度を評価する方法の一つで、今回の目的はのフィラメント材質の違いによる印刷物の強度を評価します。
試験を行おうと思った理由
3Dプリンター(Ender-3)での印刷可能材質としてはPLA、PETG、ABS、TPUとなっています。
何れもエンプラに要求される高強度、高耐久性、耐熱性というには物足らない。やはり、理想はPC(ポリカーボネート)で造形できることです。PCといえば280℃ぐらいで造形するものと思っていたので、Ender-3の最高ノズル温度設定が260℃なのであきらめていました。
そんな中、Amazonに印刷温度235-255℃、しかも約3,000円のPCを謳うフィラメントがあるのを見つけ、怪しいと思いながらも購入してしまいました。
様々な評価もありましたが、自分が使う上で納得できるものか?高強度が得られるのか?試したくなりました。評価するには色々な方法がありますが、まずは「プラスチックの曲げ試験」を行ってみようと思い立ったわけです。
曲げ試験の方法
本来、「プラスチックの曲げ試験」はJIS K7171に定められた方法で行い、応力-ひずみの関係や破壊応力や温度特性なども評価できると思います。工業試験所などへ行けば、ちゃんとした試験機があると思いますが、私の場合、お金も掛けられず、自宅の部屋であるものを使って実験できないかと思案し、次の方法で実験することにしました。
JIS K7171に準じられるところは、次のようにしました。
・試験片: 幅10×高さ4×長さ80mmの直方体
・支点間距離: 64mm
・支点及び圧子の先端形状: 半円柱型でR5(mm)
試験片(サンプル)の種類と製作
サンプルは次のフィラメント材料を使用しました。
・PLA: TINMORRY 白色
・PETG: PepRapper クリア
・ABS: PeachClover 黄色
・PC: Longsell クリア
また、造形姿勢として、平らに寝かした状態(横とする)と立てた状態(縦とする)の2種類を作成しました。
この意図は横向きと縦向きで下図のように積層時のノズル動作が異なるため、印刷後の強度に影響があるのか否かを調べるためです。
試験をする上での制約
サンプルの条件設定は出来たのですが、問題は荷重をどのように掛けるか?
試験機の様に圧子の移動速度(試験速度)を設定できることもできず、単に荷重(重り)を順次変えながら圧子に加え、たわみ量をさし目で計るという何ともアバウトな方法しか思いつきません。
結局、何とも原始的な方法ですが、身近にあるものを使ったらこうなってしまいました。
とりあえず、このようにサンプル、重りを取り換えてサンプル中央部のたわみ量を物差しで測りました。
試験結果と評価
試験結果を下のグラフに示します。横方向と縦方向それぞれのサンプルで加えた荷重(kg)とサンプル中央底面のたわみ量(mm)の関係で表しています。
本来であれば、応力-ひずみ量の関係図で示すものですが、簡易的な試験で破壊応力までも荷重を掛けられなかったこともあり、今回は傾向を評価することにしました。
上図の結果グラフから次のような傾向があるものと判断されます。
1.曲げの強度として、次のような傾向がある。
PLA>ABS≒PC>PETG
2.積層方向では、横向きより縦向きの方がやや強度がある。
まとめ
結果的には、何となく予想された通りの結果かな思います。PCにもっと期待したのですが、ABSと同等レベルでもっと強度が欲しかった。本物のPCではありませんが、耐候性や耐熱性が優れているのであれば応用できる用途もあると思います。また気が向いたらこの辺の試験もやってみようと思います。